要はスポーツカーの基本の“キ”をしっかりやると

多田:まさにそうです。そこに立ち返ればクルマの動きはまったく違うものになる。そして何よりも「基本に立ち返って考えられるような会社の仕組み」になっていることが大きな要素で、
飛び道具があっていきなりBMWができるわけじゃないということなんです。

 ともすれば、とんでもない提案が出て来るんです。実はね、エンジンの搭載位置が動いたんです。クルマって徹底的に軽量化すると、後ろが軽くなるんです。
FRは特にそうで、前を軽くする要素はあまりない。進めていくとちょっとバランスがフロント寄りだな、と、あるときはたと気づいたわけです。

 そしたら彼らは、「エンジンをもっと下げればいいじゃん」。ええ〜って、そんなことできるわけがない。我々の常識ではありえない。
生産現場の準備をしたあとで生産開始まで残された時間はこれだけしかないし、これをかえたら、あれもこれもやり直しだと。「でも、そうしたいんだろ、必要ならやればいい」と。

それで、やっちゃったわけですか……。

トヨタ・スープラ復活。BMWとの協業の現場から
スープラ開発責任者・多田哲哉氏に聞く(前編)
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/032600242/?P=1