多田:それで、会議の場でせっかくトヨタとBMWが組んでスポーツカーを開発するのだから、ポルシェにも負けないピュアスポーツを一緒に作りたいと言ったら、その場にしら〜っとした空気が流れて。

 「なに言っているんだ。俺たちは走りの性能でポルシェに勝とうなんて思ったことは一度もないし、コンフォート性能でメルセデスを凌駕しようと思ったこともない。
そんなにポルシェが欲しいなら、ポルシェを買えばいい。BMWの社員でもポルシェに乗ってるメンバーはたくさんいる。
でも我々のカスタマーはそれを望んではいない」って、ターゲットがものすごく明確なんですね。
彼らとしては「BMWのお客様はピュアスポーツカーが欲しいわけではなくて、ラグジュアリ性とスポーツ性がバランスしたところに価値があるんだ」と、一貫して言っていて。

なにか具体的な例を挙げられますか?
多田:山のようにありますが、まだあまり話しちゃいけないって言われているんですけど(苦笑)。たとえばトヨタでは設計図面を、まずラフを書いてそれをもとにテストをして、
次は工場での生産の要件もいれた図面を書いて、発売するための要件を入れてみたいな段階で進めていくんですけど、彼らは我々の倍くらい書くんです。

BMWはトヨタの倍、図面を書くと?
多田:試作車やバーチャルでシュミレーションをやるための図面なども含めての数ですけど、最初から異常に購買の精度が高い。いきなり言われたのが、
1台分の部品をすべて決めろと。例えばリアのコンビネーションライトで、まだデザインも決まっていない段階ですよ。そこに入る部品とその配置ぜんぶを決めて、
どこがバックアップランプになるかすぐに決めろって言われて。
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/032600242/?P=3