杉田先生の記事の浅田部分のみ貼ります


氷上の美学(杉田秀男) 浅田、ぜひ現役続けて 円熟味まさにこれから
2014年4月3日 7:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO69190790R00C14A4000000/

■佐藤コーチとの師弟関係、かみ合う

改めて、浅田のソチ五輪のフリー、世界選手権の演技は素晴らしかった。代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決め、これでもかと言わんばかりに激しいステップを踏み、音楽を自分の体から出しているかのように、曲と動きが一体となった圧巻の演技を披露した。

10年バンクーバー五輪後から、佐藤信夫コーチの下で基礎を一から見直してきたことが、ようやく結果につながった。あれほどの実績を持った選手が力を出し切れない時期があり、時間はかかったかもしれないが、4年間の成長を大舞台で存分に見せたと思う。佐藤コーチは「(浅田と)会話ができるようになってきた」と話していたが、コミュニケーションが取れるようになり、2人の師弟関係がやっとかみ合ってきたように見える。

はたして浅田は現役を続けるのか、それとも引退するのか。本人は「体は大丈夫で、あとは気持ちの問題」などと話したそうで、休養も選択肢の一つのようだ。もちろん進退は本人が決めるべき問題だが、希望をいえば、ぜひ現役を続けてほしいと思う。

■まだまだ伸びしろ、表現力に深みも

その理由は、世界選手権のショートプログラム(SP)で世界歴代最高得点をたたき出したように、まだまだ伸びしろを感じさせるからだ。代名詞のトリプルアクセルは跳ぶ前の体の浮き沈みがなくなって質が高くなり、以前は踏み切り違反をよく取られていたルッツジャンプなども、どんどん改良された。スケーティング技術も上がって力の使い方がよくなった。

23歳という年齢は、体力的にはまだ問題ないだろうし、円熟味が出てくるのはまさにこれからといったところだ。ソチ五輪で銅メダルを獲得した27歳のカロリナ・コストナー(イタリア)がここ2~3年で観客を魅了する演技を見せるようになったが、浅田もこれから表現力が一層深みを増していくに違いない。滑るだけでこれだけ人を引きつけるスケーターもそういない。既に完成されているが、さらに輝きを増していくのは来季以降だと思う。