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■『TWO WEEKS』(29歳)
三浦春馬が演じていたのはチンピラである。
三浦春馬はチンピラも合う。
悪ぶってるし、ハスに構えてるが、芯のところにはやさしさと弱さがある、
そういうチンピラは三浦春馬らしくて、奇妙な魅力に満ちている。

第一話の姿を眺めていて、昭和二十年代の日本映画に出てきそうだ、とおもった。
黒澤明の『野良犬』で三船敏郎の刑事に追われるチンピラ役をやれば合いそうなのだ。
すごい存在感だな、と少しおどろきながら1話を見ていた覚えがある。
なんか彼だけが時空を越えて現れた野心の塊のように見えたのだ。

再びやってもいない殺人事件の犯人に仕立てられた男(三浦春馬)と、8歳のはな(稲垣来泉)との交流を軸に
ドラマが展開する。その交流がこのドラマの魅力のすべてだったとおもう。

29歳の三浦春馬は男くさくて、大人の男性から見ても魅力的な俳優に見えた。
29歳の三船敏郎と並ばせてみたいとおもうような力を感じられたのだ。

ドラマのラストは、父と娘と、あと母(比嘉愛未)と一緒に娘の希望だった「キャンプ」をしているシーンだった。
その夜、父と娘は並んで二人きりで話をする。
これからずっと一緒にいられるんだよね、と問いかける娘にたいして、いままでたくさん間違ってきたから、
誇れるパパになるために時間をもらえるかな、と答える。
一緒にいられないとわかり、それでも健気に「また会える?」と泣き出す娘を強く抱きしめていた。
翌朝、緑あふれる朝靄のなかを、ゆっくりと歩いて去っていく三浦春馬のうしろ姿がラストシーンである。
三浦春馬はどこかへ去っていく。
稲垣来泉の「パパ!」という言葉に振り向いて、にっこりと笑うシーンが最後に見た姿である。

なんだろう。あまりにも何かを象徴してるようで、胸を突かれる。
23年ぶんの彼のドラマを見続けて、最後の最後がこのシーンだったのだ。
慟哭しそうになった。
こらえたが、しばし、涙が止まらなかった。