家に帰ると、先輩とパシリさんが喧嘩をしていた。
「アイス食ったぐらいでガタガタ言ってんじゃねーよ」
見ると、僕の家の食料や飲み物がテーブルの上に散乱していた。
ああ、僕のハーゲンダッツ・抹茶クリスピーサンドが……。
「二人ともやめなよぉ。ほらマサシ君帰ってきたよ」
そう言うサオリさんの言葉を聞く二人。
僕の方を血走った目で見るパシリさん。
一方、しらけた目で僕を見る先輩が僕に言う。
「おい、マサシやめだ。こんなの賭けにならねえ。何が幽霊だバカバカしい」
「なんだそりゃ?負けを認めんのか?」
「ああ、もうそれでいいよ。ちょっとでも期待した俺がバカだったわ」
「これなーんだ」
そう言うとパシリさんが、超人気格闘技(?)戦のチケットをヒラヒラと見せびらかす。
「こっちが負けたときのこと言わなかったじゃん。オレが負けたらコレやるよ」
パシリさんがそう言うと先輩は大人しくなり、てきぱきとテーブルの上を片付け始めた。
何なんだ。あんた、格闘技ファンだったのかよ。

賭けの内容は以下のようなものだ。
こっくりさんで霊を呼び出す。
→霊が来たと二人が認める。
→その霊の情報を、自分の見える範囲内で出来るだけ細かく書く。
→先輩と僕が答え合わせ。

ルール。二人が諦めるまで。
笑えねえよ……勘弁してくれ。
配置は中央にテーブル。僕の右隣にパシリさん、正面がサオリさん、左隣に先輩。
最初のターン。
こっくりさんこっくりさん。
「何か白々しいな。この歳でこっくりさんとか」
「懐かしいですよね」
「アタシ昔、好きな男子の名前ばらされたよ。コレで」
「おい、真面目にやれよ」
「その顔でクラス委員長みたいなこと言うなよ」
もちろん数回で何かが出るわけがない。
何度も仕切り直してこっくりさんと唱え続ける。
「ちょっとトイレ行って来るわ」
パシリさんがそう言って、部屋の電気を点けて一時休憩をとった。
ロウソクは細いものなので、燃え尽きそうだった。
新しいものに交換し、パシリさんを待つ。
「そうそう簡単に幽霊なんて呼べないよぉ」
「それはそうっすね」
「もういんじゃねーの?飽きてきたわ」
「まあまあ、もうちょっとやりましょうよ」
「そーだよ。もうちょっとしよーよ」

「『賭け』2/2」に続く