>>771
拝聴した

見た事のある作品だった。およそ3年ぶりくらいに見た気がして懐かしかった

・居酒屋で待ち合わせた蓮メリが、川原で見つかった変死体について不謹慎に盛り上がる話
・その数時間後、帰宅した蓮子が一人で事件について空想を膨らませる話
の2本だてのホラー動画

胸肉やもも肉など、柔らかい部位ばかりを欠失していたという若い女性の変死事件について
メリーは「境界で見ることができる目」で見た夢として、「あれは黒い球体の妖怪の仕業だ」と
ウソとも本当ともつかない口調で語り、さらに今食べている料理は、そのおすそ分けだと脅す
蓮子は悪趣味な冗談だとドン引きしつつも、メリーの怪しい口ぶりに、話の始終を刻み込まれる

自宅へ帰る電車に揺られながら、蓮子は先刻メリーから聞いた変死事件について何度も何度も反芻する
やがて自宅に着いた蓮子は、その妖怪に「ルーミア」と名付け、少女の姿をした妖怪だと詳細を付け加る
そして楽しそうに、まるでメリーに語りかけるように「わたしのかんがえたさいきょうルーミア」を一人つぶやく

その一部始終を、メリーは盗撮・盗聴している
実は蓮子もメリーに監視されていることを知っている。知っていてなお、空想を続ける

本作に曰く、「誰かの耳に入った空想は最早現実となる」らしい

こうして蓮子の中で創成されたオカルトは、メリーに観察されることにより、実在していくことになる
空想にふける時、蓮子の目は青色に、監視するメリーの目は赤色に染まっている。重ねれば「紫」である
すなわち、二人の間で繰り返さし生みれだされる数多の空想と観察がやがて過去へと遡上し
幻想郷を形成することになるのだよ、というオチが暗に仄めかされたところで物語は終わる
幻想郷は蓮メリというサイコレズ達の愛の結晶だったのである

以前拝読した「想悟彼我交信」にも似たような設定がシュレディンガーの猫の思考実験になぞらえて
語られていたのを覚えているが、端的に言えばそも現実も空想も同一の地平に存在する事象であり、
あらゆる可能性は客観的な観察者を獲得することで実在が確認される、というようなロジックが本作にも見られた
秘封クラスタの間では非常にポピュラーな"学説"なんだろうか

MMD作品にできることの限界を突き詰めたような作品であり
劇場映画のような巧妙なカメラワークと陰影を活かした、いかにもおどろおどろしい演出が巧妙である
東方ホラー系二次創作ばかりでなく、秘封倶楽部系二次創作の歴史においても燦然と輝く名作だと言えよう