古きよき時代に、輝かしい徳をもった聖人は、まずその国をよく治めた。

その国をよく治めようとした人は、まずその家を和合させた。
その家を和合させようとした人は、それに先だってまずわが身をよく修めた。
わが身をよく修めようとした人は、それに先だってまず自分の心を正した。
自分の心を正そうとした人は、それに先だってまず自分の思いを誠実にした。

自分の思いを誠実にしようとした人は、それに先だってまず自分の知能を十分におし究めた。
知能をおし究めるには、学問によって物事の善悪を確かめることだ。

学問を積んで、物事の善悪が確かめられてこそ、はじめて知能がおし究められる。
知能がおし究められてこそ、はじめて思いが誠実になる。

思いが誠実になってこそ、はじめて心が正しくなる。
心が正しくなってこそ、はじめて一身がよく修まる。
一身がよく修まってこそ、はじめて家が和合する。
家が和合してこそ、はじめて国がよく治まる。
国がよく治まってこそ、はじめて世界中が平安になる。

こうしたわけで、君子はまず何よりも自分の徳の充実に気をつけるのである。
(大学)