津波の話が児童図書になってるよ。

 『原文から』
「覚えてる?東北大しん災のとき、三りくのほうにつなみが来たじゃん」
「うん」
「どっかの港から、海上保安庁の船とふつうの漁船が沖ににげようとしてさ、海上保安庁のは
にげられたんだけど、漁船はダメだったんだ。それ、テレビでやったよ」
「本当?知らなかった」
「だれかが、遠いりくの安全な場所から写してたんだ。家族みんなで見ていて、がんばれって、
にげてくれって、もう、泣きながら必死で祈ったんだけど、とうとう漁船はダメったよ。
小さいからなんだ。海上保安庁くらいありゃ、技じゅつはすごいんだからにげられたんだ」
「こえー。その漁しさん、助からなかったの?」
「うん、あとでこわれた船が見つかって、その人、自分の体を、
しっかりと船にしばりつけていたって。全力で船といっしょに
つなみをのりこえようとしていたんだ」
「……」
心が重たくなって、言葉がつまった。その人にとって、船は自分の命と同じように
大切なものだったんだ。
波を乗りこえて遠さかっていく、大きな海上保安庁の船を目の前に見て、
小さな船の漁しさんは何を思ったのだろう?

★勇人と亮輔★
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上松煌(うえまつあきら)作
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