※調査期間:2024年2月29日~3月15日

抗議活動ができる「特権」をパレスチナのために あの「約束」を果たすため、38歳女性は街頭に立つ :東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/324500

2024年5月1日 12時00分

<その先へ 憲法とともに①>

 ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の不安定化を理由に、防衛費の増額や武器輸出のルール緩和がなし崩し的に進む。平和国家の在り方が揺らぐ中、言論の自由、平等、健康で文化的な生活など、憲法が保障する権利は守られているだろうか。来年で終戦80年を迎えるのを前に、さまざまな人の姿を通して、戦後日本の礎となった憲法を見つめ直す。


◆足を止める人は少なくても

 そぼ降る小雨。足を止める人は少ない。それでも、疋田香澄(ひきた・かすみ)さん(38)=神戸市東灘区=は何度も、何度も声を張り上げた。
 「パレスチナへの暴力に反対します!」「日本にできることがあります!」
 民間人犠牲者が増え続けるイスラエルのガザ侵攻。4月下旬、神戸市中央区のJR元町駅東口では、疋田さんの呼びかけで集まった15人がジェノサイド(民族大量虐殺)に抗議した。関西一円から駆け付けたのは、特定の政治団体に所属していない「生活感のある市民たち」(疋田さん)。休日のわずかな時間を活用し、家族や飼い犬と連れ立って参加する。フルタイムで働く疋田さんも同じ。2歳の一人娘を胸に抱く。

◆「ガザの壁はあと50センチほど高い」

 原点は、早稲田大卒業後の2014年、旅行先のドイツで出会った年下のパレスチナ人女性の言葉だ。
 「分断」の象徴だったベルリンの壁沿いをともに歩いていると、「ガザの壁はあと50センチほど高い」と女性がつぶやいた。ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の記念碑にも同行した。別れ際に「日本でできることはあるか」と尋ねると、少し驚いた女性は「世界中の多くの人はパレスチナとパキスタンの違いさえ分からない。パレスチナの状況を伝えてほしい」と話したという。
 昨年10月、ガザ侵攻が始まると、「約束を守らないといけなかった。いてもたってもいられなかった」。毎週日曜に街頭に立った。1人で始めたが、SNSでの呼びかけで、今では数十人に達する日もある。
 ガザの死者数は3万4000人を上回った。パレスチナ保健当局の推計によれば、犠牲者の7割以上を女性と子どもが占める。「理解を超える虐殺が許されれば、私たちは『人を殺してはいけない』という根源的な倫理観すら失う。誰かが殺されてもいい世界は、私やあなたが殺されてもいい世界ということになる」。その思いが日増しに強くなる。

◆国会議員へのアンケート

 ドイツで約束した「日本でできること」を探った。友人やデモで出会った人たちと協力し、「ガザ『人道危機』国会議員アンケート」を実行。
https://zenkokuproject.jp/

疋田さんは「自宅の冷蔵庫の買い替え費用」を転用し、仲間とともに返信用封筒と切手を添えた質問状を郵送した。ガザの人道危機をどう捉えるのか、恒久的停戦に向けた国会決議を行うべきか。こうした7項目への回答をウェブで閲覧できるようにした。

 回答率は1割強。一部野党や日本パレスチナ友好議員連盟を除けば、人道危機への問題意識は物足りず、イスラエルの出展が決まった大阪・関西万博を推し進める「日本維新の会」の回答はゼロ。ある所属議員は「党として回答しない」と電話をかけてきた。

 「市民が選んだ国会議員がどんな考えで、どんな行動を取るのか。可視化したかった。自ら議員に働きかけるのもありだと、多くの人に知ってほしかった」と狙いを語り、こう続けた。

 「回答は今も受け付けている。結果は少なくとも、国政選挙の投票日までは示すつもりです。


◆沖縄へ、福島へ、足を運ぶ
 西日本の地方都市出身。19歳で上京し、働きながら通える早大の夜間学部に入学した。沖縄戦で強いられた集団自決に関心が湧き、現地に足を運んだ。
 卒業直前に福島第1原発事故が発生し、ほぼ毎週のようにボランティアに通い詰めた。2018年まで、被災児童・生徒に外遊びの機会を提供する「保養キャンプ」に携わり、避難先での生活や子育ての相談に乗ってきた。成果や課題をまとめた書籍も刊行した。
 沖縄の地上戦と福島の原発事故。「両方とも、弱者にしわ寄せが及んでいる。国家や首都圏といった大きな存在のために、小さな存在や個人が追い詰められてしまうのは、とてつもなく不平等だ」と強調する。

◆大国の見て見ぬふり

(略)

※全文はソースで。