愛知県の大村秀章知事が会長を務める国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会が、名古屋市に未払いの負担金3380万円の支払いを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は、市側の上告を棄却する決定をした。6日付。市に全額の支払いを命じた一審判決が確定した。裁判官5人全員一致の意見。

◆河村たかし市長が問題視、一部支払いを拒否

 芸術祭では、企画展「表現の不自由展・その後」で、戦時中の従軍慰安婦を象徴する少女像や昭和天皇の写真を使った版画を燃やすシーンがある映像作品が展示され、抗議が殺到。名古屋市の河村たかし市長が問題視し、市の負担金約1億7100万円のうち3380万円を支払わないと決めた。
 一審名古屋地裁判決は、展示が強い政治性を帯びる内容だったとしつつ「負担金の交付によって、市が作品の政治的主張を後押ししているとは言えない」と指摘し、「芸術祭は公共事業で政治的中立が求められる」と不払いを正当化した市側の主張を退けた。市側は一部作品を「ハラスメントともいうべきで、違法性は明らか」とも主張したが、判決は「鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせるという理由で、芸術作品を違法と軽々しく断言できない」として認めなかった。
 二審名古屋高裁も一審判決を支持し、市側の控訴を棄却した。
 決定について、河村市長は「税金の使い道に対する市長の裁量権について何の判断も下されなかった」と批判した。一方、大村知事は「妥当で当然だ。主張が全て取り入れられた」と述べた。(太田理英子)

東京新聞
2024年3月7日 16時38分
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