自民党が裏金事件に大揺れの中、党要職の茂木幹事長に「政治とカネ」の問題が噴出し、大炎上している。文芸春秋電子版が12日、「《1枚の領収書で2件の支出》茂木敏充自民党幹事長が選挙経費を“二重計上”していた 公選法違反の疑い」と報じ、SNSで批判が殺到しているのだ。

 記事の概要はこうだ。2021年の衆院選に際し、茂木幹事長が栃木県選挙管理委員会に提出した「選挙運動費用収支報告書」と、茂木幹事長が代表を務める政党支部の政治資金収支報告書(21年分)には、同日付で同じ会社に4万数千円を支出したと記されている。それぞれ「備品」と「電気代」で別の名目だ。

 驚くのは、選挙運動費用収支報告書に添付された領収書の写しと支部の収支報告書の領収書の写しが、日付や宛名、金額に至るまで全て同じ筆跡だったこと。1枚の領収書を使い回したのは明らかだ。茂木事務所は文芸春秋に「支部の収支報告書に計上すべきところ、事務的ミスで選挙運動費用収支報告書に計上されていることが判明」したとして、収支報告書を訂正すると回答したという。

 X(旧ツイッター)では〈自民党議員はこういう手口で裏金作り!〉〈「事務的ミス」などと弁明しているが、全く信用に値しない〉といった声が飛びかっている。

1億2000万円の「使途不明金」

もっとも、茂木幹事長の「政治とカネ」疑惑は今に始まった話ではない。外相だった20年には、茂木幹事長の後援団体である「茂木敏充後援会総連合会」で16~19年、詳細不明の支出が計1億2000万円超に上ったことを共同通信に報じられた。総連合会の同期間の収入は計1億3120万円で、茂木幹事長が代表を務める資金管理団体からの寄付が99.9%を占めた。総連合会の支出のほぼ全てが使途不明だったのである。

 カラクリは以下のようなものだ。政治資金規正法は、国会議員が代表を務める資金管理団体については、1件1万円超の支出を収支報告書に記載するよう義務付けているが、その他の後援団体に関しては1件5万円以上の支出のみを記載義務の対象としている。つまり、茂木事務所は記載義務が厳格な資金管理団体から、記載義務が緩い後援団体にカネを移し、支出を“隠蔽”したも同然なのだ。

 当時、問題視されたのに、茂木幹事長はその後も脱法的な“支出隠し”を継続。日刊ゲンダイが20~22年の収支報告書をチェックしたところ、やはり資金管理団体は総連合会に計9650万円を寄付。総連合会は大半の支出を記載していない状態だ。

 まだある。経済再生相だった17年には、地元選挙区内の有権者に衆院手帳や線香を配布した公職選挙法違反疑惑が飛び出した。公選法は、議員や候補者が有権者に線香1本でも配ることを禁じている。寄付について「氏名を表示し、または氏名が類推されるような方法でしてはならない」と定めている。国会で追及された茂木幹事長は「秘書が配布した」「配った物に私の名前は入っていない」と疑惑を否定。

 ところが、当時、日刊ゲンダイ記者は茂木幹事長の選挙区の有権者から「茂木さんからの頂き物だと思っています」といった証言を得ている。真相は、今なおハッキリしないままだ。

 茂木幹事長の政治資金の脱法処理は常態化しているということ。そんな男が幹事長として、裏金事件を受けた「政治改革」を進めるなんて、悪い冗談だ。

「茂木幹事長は裏金事件について『当事者に説明責任を果たしてもらいたい』と言いましたが、自分の問題も説明できない人物に政治改革など無理でしょう。過去の疑惑も含めて、キチンと説明責任を果たすべきです」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)

「事務的ミス」「秘書が配った」なんて言い訳は、とても通用しない。

日刊ゲンダイ
2/13(火) 11:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/934b5d1c54822c5df1599bcaa542527fc655e666