とうとう、国政に“飛び火”した。週刊文春が4週連続で報じた木原官房副長官の妻の元夫・安田種雄さん(享年28)不審死事件をめぐり、立憲民主党が1日、警察庁と内閣官房へヒアリングを実施した。野党も疑問視する不可解な再捜査の終焉。先週、異例の会見に臨んだ妻の元取調官は木原夫妻の衝撃の会話を打ち明けていた。大新聞・テレビが報じない驚愕の中身とは──。

  ◇  ◇  ◇

〈週刊文春の記事は、事実無根〉〈捏造されたであろう風説〉──。木原妻が不審死事件の重要参考人として警察の聴取を受けていた過去を文春が初めて報じた先月5日、木原氏は代理人弁護士を通じて即座に報道内容を完全否定。司法記者クラブに「御通知(至急)」と題したA4判3枚の書面を送付し、文春への刑事告訴をチラつかせた。

 以来、木原氏は説明を避け、ダンマリを続けている。松野官房長官は7月31日の会見で、説明の機会を設けるかどうかについて「プライベートに関することでもあり、木原氏の判断かと思う」と答えるにとどめた。

 しかし、コトは「総理の最側近」と言われる政権幹部が自身の妻への捜査に不当に介入した疑惑が持たれる重大事案だ。〈事実無根〉の一点張りで説明責任から逃げ続けていいのか。木原妻の取調官を務めた元警視庁捜査1課の佐藤誠氏が先週末に開いた実名会見でも、木原氏にとって“不都合”な証言が飛び出している。

 佐藤氏が会見で「ビックリした」と前置きして語ったのが、事件を知るキーマンとして捜査線上に浮かび上がったY氏の存在を木原氏と妻が共有していたことだった。

 種雄さんの不審死事件は発生から12年を迎えた2018年4月、警視庁が再捜査を開始。その過程で捜査員がキーマンとにらんだのが、事件当時、種雄さんと家庭を築いていた木原妻と“親密な関係”にあったY氏だった。

 文春の報道によれば、Y氏は種雄さんの友人で、木原妻とは共通の趣味であるフリーマーケットを通じて知り合った。やがて、妻は子ども2人を連れてY氏の元に逃避行を繰り返すようになったという。

 種雄さんが亡くなった夜、木原妻が頼ったのもY氏だったようだ。妻から「種雄くんが刺せと言ったので、刺しちゃった」と電話を受けたY氏は自家用車で現場へ。血濡れた種雄さんの遺体と対面し、隠蔽工作をアドバイスしたとされる。

共有した重要人物の存在

 不審死事件の再捜査が始まった18年当時、Y氏は覚醒剤事件で逮捕され、宮崎刑務所に収監されていた。収監中のY氏を捜査員は約30回にわたり聴取。佐藤氏も事件性を認めるY氏の証言を確かめるため、2回ほど宮崎に飛んだ。Y氏の供述を軸に捜査は進み、木原妻への事情聴取に至った。

 佐藤氏が会見で言及したのは、取り調べを終えた妻と木原氏がタクシーに同乗した際、ドライブレコーダーに残された2人のやりとりだ。木原氏が妻に「俺が手を回しておいたから心配すんな」との言葉をかけたと文春は報じていたが、さらに佐藤氏は会見で次のように明かした。

「(タクシーの中の木原の発言は)もしかしたら励ましているだけかもしれないですよね。『俺が後ろで手を回してやる』とか、ハッタリかもしれないじゃないですか。夫が妻を励ましているというふうにも取れる。ただ、俺がビックリしたのが、そのタクシーの中で、Yさんの名前が出てきたこと。(木原と妻の)2人の間でYさんを共有していたんだな、と」

 本来なら面識などないはずのY氏の名前をなぜ知っているのか──。つまり、木原氏は、かつて自分の妻と“親密な関係”を築き、事件当日を知る重要人物の存在を約5年前から把握していたことがうかがえる。事件のキーマンまで知っていたとすれば、どうして不審死事件の報道を〈事実無根〉と言い切れるのか。

 それでも〈事実無根〉と言い張るならば、Y氏の存在を知るに至った経緯はいかに? 木原氏の説明が待たれる。

日刊ゲンダイ
23/08/01 16:20
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326844/