政府税調の中期答申で、増税メニューの中に通勤手当の増税が盛り込まれた。大部分のサラリーマンが受けている通勤手当を増税対象に加えるというのは、理不尽な話だ。サラリーマンの定期代というのは、会社に出勤するための経費で、そこに課税されたら、持ち出しになってしまうからだ。ただ私は、財務省が本当にやるのではないかと考えている。理由は2つある。

 1つは、社会保険料の計算で、通勤手当はすでに「課税対象」になっていることだ。厚生年金保険料や健康保険料を計算する際には、「標準報酬月額」が使われるが、その算定の際に、通勤手当が全額算入されているのだ。厚生年金の場合は、保険料が増えれば、その一部は年金給付となって返ってくるから、まだ納得できるが、健康保険料の場合は余分に取られた分は永久に返ってこない。遠距離通勤で、高い交通費を負担している人ほど、医療の負担が重くなるというのは、理不尽な話だが、現実はそうなっているのだ。

 もう1つの理由は、通勤手当の一部がすでに課税対象になっているということだ。公共交通機関を使っている場合は、月額15万円を超える額、自動車通勤の場合は、通勤距離が片道15キロ以上25キロ未満のケースで1万2900円を超える額には課税されることになっている。

 大企業の幹部には運転手付きの社用車で通勤している人がたくさんいる。おそらく月額100万円くらいのコストがかかっている。しかし、それは非課税で、庶民はガソリン代にも満たない通勤手当が課税される。これだけ理不尽な税制を作っているのだから、通勤手当を課税対象にするくらいの理不尽は、当然あり得ることなのだ。庶民は、底なしの増税地獄に落ちていくしかないのだろう。(経済アナリスト)

スポーツ報知
7/23(日) 12:00
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