【集中企画・マイナ狂騒】#11

「♪違う違う、そうじゃ、そうじゃない~」──。そんな総ツッコミの“大合唱”を待っているのか。

マイナンバーカード問題 国が見直す気がないなら国民が返納運動を起こすしかない(ラサール石井)

 マイナンバーカードと健康保険証を一体化する「マイナ保険証」をめぐり、政府が申請・交付の方針を転換。安全性を担保していたはずの「暗証番号」を設定しなくても、マイナ保険証として利用できる措置を打ち出した。ますます、現行の保険証を廃止する意味が分からなくなってきた。

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 松本総務相は4日の閣議後会見で、マイナカードの管理に不安を感じる高齢者などを対象に、今年11月ごろから暗証番号の設定がなくても交付できるようにする方針を表明。「認知症などで暗証番号の管理に不安がある方が安心してカードを利用でき、代理人の負担軽減にもつながる」と胸を張った。

 新たな方針について、松本氏は「福祉関係をはじめ、関係されると思われる方々の声を聞いてきた」と“聞く力”を強調。確かに高齢者施設から入居者のマイナカードや暗証番号の管理に苦慮する声が上がっていたが、まさかの「暗証番号なし」とは、異次元のヤケクソ対応だ。河野デジタル相がマイナカードの「名称変更」に言及したのに続き、もはや“ツッコミ待ち”のボケをかましているとしか思えない。

 大前提としてマイナ保険証の利用には、カード申請の際、電子証明書の発行と暗証番号の設定が必須。暗証番号「なし」だと、カードの個人向けサイト「マイナポータル」や、各種証明書のコンビニ交付サービスなどは利用できなくなる。

 つまり、保険証としては使えても、マイナカードを持つ意義はほぼ失う。メリットがあるとすれば、医療機関の窓口でオンライン資格確認ができるぐらい。暗証番号なしでも、顔認証か目視で確認可能だ。

「持つ持たないにかかわらず、質の高い医療を担保するのが政府の役目」

マイナ保険証でオンライン資格確認を行えば、病院側が患者の薬剤情報や特定健診などを閲覧できるため、政府は「より良い医療につながる」とうたうのだが、このサービスだって閲覧情報が限られることなどから、現場の医師に「医療の質の向上につながるとは思えない」と指摘されるシロモノだ。

 メリットが薄いばかりか、暗証番号を不要にしたところで、カードを管理する側の負担は決して減りはしないのだ。

 マイナ保険証に必要な電子証明書は5年に1回、わざわざ役所窓口に行って更新しなければならない。有効期限2年の現行の保険証よりも長いが、現行の保険証は有効期限が切れる前に、黙っていても保険組合から新しい保険証が届く。役所窓口での更新が必要なマイナ保険証の方が面倒くさいのは言うまでもない。

「正直、デメリットしか感じられません。そもそも、認知症の方にまでマイナカードを持たせること自体、おかしな話です。持つ持たないにかかわらず、質の高い医療を担保するのが政府の役目です。カードを持たせることが政府の目的になっているのは本末転倒。こんなむちゃくちゃなデジタル化が、豊かな社会の実現につながるでしょうか」(「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎氏)

 現行の保険証が廃止された場合、マイナカードを持たない人は毎年、被保険者資格を担保する「資格確認書」を申請しなければならない。これまた面倒極まりない。

 公明党の山口代表は4日、資格確認書について、本人からの申請を待たずに「プッシュ型でお届けするということも検討していただきたい」と政府に注文を付けた。「プッシュ型で送付する」なら、現行の保険証のままでいい。意味不明だ。

「政府は『保険証廃止は、国民の不安払拭が大前提』と繰り返していますが、本気でそう思うなら、現行の保険証を維持すれば済む話です」(宮崎俊郎氏)

 保険証廃止の方針を曲げない“大ボケ”政権には、ツッコミを入れまくるしかない。

日刊ゲンダイ
7/5(水) 16:30
https://news.yahoo.co.jp/articles/48ff54334c87d1cd9493211e4688e4d69996da83