まさかのマイナス幅拡大だ――。厚労省が6日発表した4月の毎月勤労統計によると、名目賃金に物価の変動を加味した実質賃金は前年同月比3.0%減で13カ月連続のマイナスとなった。

 驚いたのが前月比。3月の2.3%減から0.7ポイントも悪化してしまった。4月になれば、春闘の“大幅賃上げ”が反映され、実質賃金はプラスに転じるか、少なくともマイナス幅は縮小すると期待されたが、裏切られた格好だ。

 加藤厚労相は5月以降の給与に賃上げが反映される企業が多いとし、「効果は5月から7月の調査に段階的に表れるのではないか」とかわしたが、賃金が物価上昇を上回るのは至難の業だ。この先も物価高の要因がいくつもあるからだ。

「これから政府の支援策が次々と終了し、ストレートに価格が上がります。全国旅行支援は6月または7月に終了。ガソリン代支援の補助金は6月から段階的に削減され、電気代支援は9月が期限です。防衛費増額が影響し、少子化対策の財源も見つからない事態になっている。家計への支援策を継続する財源を捻出するのは不可能に近い」(経済ジャーナリスト・井上学氏)

21カ月の“アベ超え”も視野に

原油高も懸念される。「OPECプラス」は協調減産を2024年末まで延長し、原油の供給不足がささやかれる。複数のアナリストは、年末までに1バレル=100ドルに向かうと予測している。

 足元は1ドル=140円前後の円安水準が続いているが、日銀の緩和継続でさらに円安が進むという見方が有力。輸入品の価格アップは避けられない。

「昨年にはあまり見られなかった価格転嫁が登場しているのも要注意です。電気代上昇を理由とした値上げが目につくようになったし、賃上げにより、人件費の負担が増えた企業が自社の製品やサービス価格に転嫁する動きも出ています。水際対策が緩和され、インバウンド需要が旺盛になりつつありますが、宿泊料金など旅行関連の価格はすでに跳ね上がっている。インフレが収まる見通しは全く見えません」(井上学氏)

 実質賃金マイナスの連続記録は、安倍政権下の2013年7月から15年3月の21カ月。この調子なら“アベ超え”も見えてきた。岸田首相は、給料を減らし続けた“貧乏神宰相”として歴史に名が刻まれることになるのか。

日刊ゲンダイ
6/7(水) 13:30
https://news.yahoo.co.jp/articles/7adada799f09d8d3dfcc41fb6995436c805a4693