ポスターを剥がされて

 「無名より、悪名高いほうがいいよ。ハハハ」

 今年3月、地元の神奈川県川崎市で開かれたある会合で、山際大志郎・前経済再生担当大臣はこう言って笑ったという。

 岸田文雄総理は、総選挙の腹を固めた。上昇に転じた政権支持率は、広島サミットでもう一段上がる。勢いに乗じ、6月の国会会期末に解散を打つ―自民党はそんなシナリオを描いている。

 だがそこには、大きな誤算がある。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合、以下統一教会と呼ぶ)の問題が決着していないことだ。岸田総理は「もう皆、忘れただろう」と思っているかもしれないが、大間違いである。

 川崎市内を歩くと、至るところで奇妙な光景が見られた。岸田総理の顔が載ったポスターの横に、別のポスターが剥がされた跡がある。地元の自民党支部関係者が言う。

 「4月の統一地方選の直前、支部に『山際さんのポスターを剥がしたい』『ウチも統一教会のシンパだと思われたら困る』『こんなことになると分かっていたら、(自宅の周りに)ポスターなんて貼らせなかったのに』という支持者からの連絡がどっと増えました」

「裏切られた」の一言

これまで山際氏は自身と統一教会の関係について、後援会の役員や大口の献金をしている一部の支持者にしか詳しい事情を説明していない。多くの一般支持者は、詫びの一言すらない山際氏に失望を抱いているのだ。

 山際氏が支部長を務めてきた自民党神奈川県第18選挙区支部に、毎年数万円の寄付をしてきた70代の男性が語る。

 「初めて会った時の彼は好青年だった。ずっと応援してきて大臣になって、これからと思っていたのにガッカリだ。統一教会と関係があったと知っていたら、寄付も応援もしなかった。裏切られた、の一言です。

 せめて秘書だけでもお詫びに来れば別だけど、本当に一切ない。自分が出た(教団の)会合を『報道を見ると、出席していたようだ』なんて、説明の仕方も白々しいよ」

 同市内に住む60代男性も「もう自民党を支持するのをやめようかと思っている」と憤る。

 「地元の支持者向けに、一言『今まで隠していて申し訳なかった』と謝罪する場を設ければいいのに、なぜやらないのか分からない。統一教会の会合で海外にまで行くくらいだから、簡単には関係を切れないのかねえ。

 このままでは、仮に自民党が次の選挙で別の候補を立てるとしても、じゃあその人に入れようとはなりませんよ」

むしろ教団は「臨戦態勢」

山際氏と同じく、統一教会との関係の深さが地元有権者に知れ渡っているのが、自民党政調会長の萩生田光一氏だ。日頃から地元の東京・八王子市内の教団関係施設を訪れ、'22年の参院選直前にも、生稲晃子参議院議員を連れて挨拶していたことなどが判明している。

 「統一地方選では、戸別訪問をすると『統一教会があんなに自民党に入り込んでいたなんて、ショックだった』『信用していたのに』と失望やお叱りの声を多くいただきました」(自民党八王子市議)

 今回の八王子市議選では、立憲民主党の候補がトップ当選し、自民系候補は総得票数を約8000票減らした。自民党八王子支部で、選挙活動を手伝った関係者はこう語る。

 「八王子には公明党の支持母体である宗教団体・創価学会の施設が多くあります。その創価学会の関係者は『統一教会と同じと思われてはたまらない』と、特に敏感になっている。自民党への不信が公明党支持者にも広がっているのは否めません。

 また無党派層には『自民党しか選択肢がない』と消極的に票を投じている人も多い。宗教が政治に絡むこと自体を嫌う人も多いですから、『公明党も自民党も宗教か。幻滅した』という声もいただきます。次の総選挙では、本格的に自民党離れが始まる可能性もある」

 一方で、ほとんど統一教会問題の影響が見られない地域もある。岸田政権で官房副長官を務める木原誠二氏の地元・東京20区(東村山市など)では、統一地方選で当選した自民党市議がこう語る。

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現代ビジネス
5/15(月) 7:03
https://news.yahoo.co.jp/articles/577407cef79a1eeab95318883dce497a41bba380