自民党は28日、性的少数者(LGBTQ)の理解増進法案の議論を本格化させた。5月に迫った先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前の成立を求める声が上がる一方、伝統的な家族観を重視する保守派議員を中心に異論が相次ぎ、対立の根深さが改めて浮き彫りになった。党執行部は超党派議員連盟で合意した案を修正した上で、与党案として野党にも賛同を呼びかけたい考えだが、前提となる党内の意見集約すら見通せない状況だ。

 会合では、推進派が「普遍的な価値観を共有するG7のサミットまでに法案を成立させるべきだ」などと強調。啓発活動などに取り組むことになる国や地方自治体の準備期間も考慮し、早期の結論を促した。
 反対派は「社会の根幹、家族そのものに関わる問題だから慎重にやるべきだ」などと訴え、法整備に伴う弊害が多いとも主張。西田昌司参院議員は「差別は許されない」という条文の一節について「かなり厳しい対立を生むような言葉遣いで日本の国柄に合わず、(LGBTQの当事者に)逆に不利益になるのではないか」と記者団に語った。
 2021年の超党派議員連盟の合意案は自民党だけが了承を見送っている。合意案とりまとめの中心となった稲田朋美元政調会長は会合後、「2年前とほぼ同じような反対意見だった」と述べた。
 自民党の対応に、各党はいら立ちを強める。G7広島サミット前の法案成立を求める公明党の石井啓一幹事長は、自民党が修正を検討していることに関して「超党派でまとめた案と趣旨が変わらないことが大事だ」と指摘。立憲民主党の泉健太代表は「自民党の中でのさらなる譲歩、後退は許されない」とけん制した。
 自民党の議論再開を受け、同性婚の実現を目指す「Marriage For All Japan—結婚の自由をすべての人に」などは東京都内で会見。松中権ごん理事は、岸田文雄首相の元秘書官によるLGBTQ差別発言から約3カ月たったことに触れながら「法律制定が拙速だと言ってるのは自民党だけ。命を守る法律を早く作ってほしい」と要望した。(曽田晋太郎、奥野斐、柚木まり)

東京新聞
2023年4月28日 20時22分
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