世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の創始者が提唱した日韓トンネル構想。ある元信者が朝日新聞の取材に応じ、事業に絡んで教団から政治家の名前を聞かされていたこと、資金集めへの協力の求めに応じたことで財産を失いかけたことなどを明かした。

 「ずっと記憶にフタをしてきました」

 福岡市の郊外に暮らす女性(73)がそう言って取り出した箱からは、教団創始者の故・文鮮明氏と、妻で現総裁の韓鶴子氏が写った写真や、毎晩唱えた「祈禱(きとう)文」が出てきた。

 喫茶店を経営していた35年ほど前、信者だった叔母に連れられて市内の教団施設へ行った。そこで「霊能力者」と呼ばれる人物に言われた。「嫁ぎ先で不幸になる家系だ」

大物政治家の名前出し「総理になれば日韓トンネルも開通」

 思いあたる節があった。夫(76)の姉も妹も夫が病死し、義父がいつも嘆いていた。霊能力者に「子や孫のためにもここで断ち切りなさい。財を清めなさい」とたたみかけられ、1500万円の多宝塔を購入。教団にも夫婦で正式に入会した。

 義父が病床に伏すと、教団関係者が次々と見舞いにやってきた。1990年10月に義父が亡くなり、夫が土地や建物を相続すると、教団関係者から直々にお願いをされた。「土地や建物を担保に入れて、教団が借り入れをする際の名義人になってほしい」というものだった。

 教団関係者は繰り返しのお願…

朝日新聞
2023/2/25 8:30
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR2S3RP2QBXTIPE00M.html