世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害救済に取り組む「全国統一教会被害対策弁護団」は22日、元信者やその親族ら50人が物品購入や献金で被害を受けたとして、返金を求めて教団に集団交渉を申し入れる通知書を発送した。請求総額は、慰謝料を含めて約16億円。申し入れは今回を第1次とし、今後も続けるとしている。弁護団は記者会見で「教団は改革をアピールしているが、まずは過去の膨大な被害を弁済すべきだ」と訴えた。

 弁護団によると、対象は北海道や東京、広島など18都道県の元信者やその相続人らが受けたとする48件の被害。過去に納めた献金や経典の代金は「母親が霊界で苦しんでいる」「先祖供養で病気が治る」と不安をあおられたり、別の信者に強引に現金を持ち去られたりした不当な被害だったとしている。その額は25件が1000万円以上で、うち6件は1億円超。最高は2億2000万円という。

 被害を受けた時期について、24件は「この10年以内も続いていた」と訴えている。教団は霊感商法で信者らが摘発された2009年に「コンプライアンス宣言」を出して以降、法令順守を徹底してきたと主張するが、弁護団の紀藤正樹弁護士は「宣言後の被害も多い。被害者は全国にまたがり、組織性や継続性は明白」と非難した。

 会見には、1億4000万円の返金を求めて交渉に参加する関西地方の80代女性も同席した。夫が病気になった09年に知人に誘われ入信したという。「先祖供養をしないと治らない」と度々献金や経典、つぼの購入を迫られた。22年6月にも貴金属類と引き換える形で絵画を買わされた。「亡くなった夫や息子に申し訳なく、なんでこんなことになったかと反省している。通帳は空っぽ」と話した。

 女性の代理人でもある阿部克臣弁護士は「(要求額は)過去の通帳履歴や手帳による推計で、実際の被害はもっと大きい。生命保険の解約や不動産売却をしてまで献金した人もおり、ほとんどは正体を隠した不当な勧誘による入信だった」と話した。弁護団は「今回の数倍の相談がある」として2次以降の申し入れも続け、教団の対応次第では訴訟に持ち込むとしている。

 旧統一教会広報部は取材に「通知書を見ていないので、詳細は分からない。(元信者からの返金要求は)これまでも個別に応じており、今回も内容を見て判断する」と話した。【春増翔太】

毎日新聞
2/22(水) 20:11配信
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