自公両党は6日、岸田文雄首相が2023年度から5年間の防衛費を総額約43兆円とするよう指示したことを受け、取得する装備についての議論を本格化させた。だが、防衛費の大幅増は、27年度に対国内総生産(GDP)比2%に到達させるため「規模ありき」の指示で、安定財源の確保や必要な装備の精査は後回し。当面は国債発行で賄い、数年後に増税との声もあるが、いずれも巨額の国民負担につながる。(川田篤志、市川千晴)

◆装備品議論も結論出ず…金額ありきの指示
 「歴史的な伸びだ」。防衛省関係者は、現在の中期防衛力整備計画(19~23年度)に盛り込まれた27兆4700億円程度から1.5倍超となる今回の大幅増に手放しで喜んだ。
 23~27年度の5年間で43兆円への積み増しは「防衛費を5年以内にGDP比2%以上」とする自民党の主張に沿ったものだ。GDP比2%に相当する防衛費は年約11兆円に上る。
 22年度の補正予算を含め年6兆円弱の防衛費を仮に毎年5000億~1兆円増やし、5年間で総額約43兆円を投じる場合、27年度には単年度で10兆円余りとなる。防衛費を補完する予算と位置付ける科学技術予算や公共インフラ整備費などを含めれば、年11兆円を上回るとみられる。
 防衛省は当初、希望額として48兆円を主張する一方、財務省は35兆円程度が妥当と提示。最終的に自民党の後押しを受けた防衛省が「防衛力強化のために必要なギリギリの水準」とする43兆円の要求が通った形だ。
 与党は6日、取得する装備品を初めて具体的に議論したが結論は出なかった。ある与党関係者は「具体的な装備を査定している最中に政治決着になった。議論がぐちゃぐちゃになる」と首相の指示が金額ありきだったことを明かす。

◆毎年さらに5兆円、どう確保

 GDP比2%を達成した場合には現在より毎年5兆円も膨らむ財源を確保する議論は置き去り状態だ。首相は財源について「歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置」を例示し、政府・与党で年末までに方向性を決めるよう求めた。
 与党としては、来年4月に統一地方選を控え、現段階で増税を前面に出したくないのが本音で、歳出削減や特別会計の剰余金の活用を優先すべきだとの意見が強まっている。たばこ税や酒税の増税も選択肢に挙がるが、いずれも巨額の費用を賄えるほどの規模にはならない。そのため、数年後には所得税など基幹税の増税を余儀なくされ、国民の負担増になる懸念がある。
 自民党の萩生田光一政調会長は「1、2年は国債で」と語り、世耕弘成参院幹事長も「年末までに税目や税率を決めるのは不可能だ」と指摘。防衛費の大幅増の規模だけが先行し、将来の国民負担となる国債発行で賄って増税論議を先送りする声が上がっている。

東京新聞
2022年12月7日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/218352