日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、中国が勝手に設置している「海外警察署」について聞いた。

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 自国の警察捜査権や逮捕権を外国で行使すれば、その国の主権を大きく侵害することになる。ところが、中国は海外に54カ所も「警察署」を無断で設置しているというのだ。

 週刊新潮は、「BBCが報じた驚愕の事実 中国が世界中に『警察署』無断設置 日本にもある『秘密拠点』に親中『国会議員』と『中国人女性秘書』」(2022年11月17日号)という記事で、中国の海外警察について報じている。

《英国の公共放送BBCは先ごろ、このように報じた。
〈中国、警察の出先機関を外国で設置か オランダが『違法』と非難〉
 内容は以下の通りである。
 中国南東部、台湾海峡に面した福建省の省都・福州市。その公安局が今年、「海外110(番)」なるサービスの開始を発表した。これまでに少なくとも二つの省の公安局が5大陸21カ国で計54の『海外警察サービスセンター』を設立していたことが判明している――。》

コロナを大義名分

「中国が『海外警察サービスセンター』を設置したのは、新型コロナの感染拡大が始まった2020年からです」

 と語るのは、勝丸氏。

「表向きは、コロナ禍で海外にいる中国人が不便を被っているので免許更新などのサービスを行うための組織だと説明しています。ですが、実際は、海外にいる不良中国人を監視するためのものです」

 同じような監視制度は以前からあった。

「例えば、横浜の中華街では昔から日本にいる中国人が監視役を担ったりします。反政府的な中国人などがいれば中国大使館の諜報員に密告していました。結局、そういうやり方では限界があるので、中国の公安当局が出先機関をつくり、そこで中国人の犯罪者や反中国的な動きをしている者の情報を収集するようになったんです」

 海外警察サービスセンターに通報があると、問題人物の中国にいる親族の情報を収集するという。

「海外警察の要員が直接問題人物に接触し、『故郷にいる両親がどうなってもいいのか』と脅し、帰国を促すのです。海外警察ができてから、世界各国にいる中国人の帰国が急増しました。その多くは犯罪者というより、民主運動家や習近平政権への不満分子などです。昨年1年間だけで、実に30万人の中国人が海外警察によって帰国させられたと言われています」

公安と捜査2課がマーク

先に紹介した週刊新潮の記事によると、中国の「海外警察」は東京のJR秋葉原駅近くの5階建てのビルにある。団体名は、『一般社団法人日本福州十邑(じゅうおう)社団聯合総会』(以下、福州十邑聯合)だ。この団体の常務理事になっているのが、「呉麗香(仮名)」という40代の中国女性である。

 彼女は自民党の松下新平参院議員の外交顧問兼外交秘書を務め、国会や議員会館に自由に立ち入りできる「通行証」まで所持しているのだ。

「呉氏が松下議員に接近したのは数年前です。松下議員が主催した資金集めパーティーに彼女が参加したのです。彼女はナマコなどの海産物を扱う貿易商を営んでいました。松下議員に接近して、議員事務所を手伝うようになったのです」

 週刊新潮によれば、松下議員は、自身の夫婦関係を危うくするほど彼女に入れ込んでいたという。

「公用車の後部座席で、二人が仲睦まじくしているところを運転手が目撃しています」

 警視庁公安部と捜査2課が呉氏をマークした。

「彼女は中国の海外警察の役割を果たしているのではないかとみて、公安が監視することになりました。捜査2課は、松下議員事務所が彼女に報酬を払っていなかったことに注目していました。週に3、4回無報酬で働いていたため、公職選挙法違反に当たる可能性があったからです」

 週刊新潮によると、松下議員は2020年10月、首相官邸で開かれたパンケーキの試食会に呉氏を帯同、当時の菅義偉首相に引き合わせたという。

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デイリー新潮
11/25(金) 6:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/fad89d9658ce22c556e334885b14bc781a14f435