寺田稔総務相(64)の関係政治団体「寺田稔竹原後援会」が、政治資金の支払いを巡り、「寺田稔」宛の領収書を多数受け取っていたことが、「 週刊文春 」の取材でわかった。寺田氏は、故人を会計責任者としていた同後援会について国会の場で「別団体」と答弁してきたが、寺田事務所と「寺田稔竹原後援会」は事実上、一体的に運営され、寺田氏が関与してきた疑いが強まった。

 寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚である総務相に起用された。

「週刊文春」は10月6日発売号などで、慶子氏が代表の政治団体「以正会」の人件費を巡る“脱税疑惑” を報じてきた。 10月20日発売号では、大臣秘書官・迫田誠氏への取材音声などを基に、中坂智明秘書(現公設第二秘書)らに対する報酬の“上乗せ金”を、以正会経由で支払っていたことは源泉徴収を避ける目的があった旨 を指摘。これに対し、寺田氏は国会で「秘書を通じて、ある請負者に支払った」などと答弁し、疑惑を否定している。

 さらに、 10月27日発売号で報じたのが、「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者とし、収支報告を行っていた問題 だ。同後援会は、寺田氏の国会議員関係政治団体として広島県選挙管理委員会に届け出されている団体。事務担当者として記載されている2人はいずれも、寺田事務所のスタッフだ。

「寺田稔竹原後援会」では、2019年10月に亡くなったX氏が会計責任者として署名・捺印の上、2020年5月29日付、2021年5月25日付で〈政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません〉と宣誓していた。これについては、政治資金規正法違反及び有印私文書偽造の疑いがある。

 一方、寺田氏は国会で「本人がちゃんとハンコを押してこれでやってくれと託していた可能性もある」としたうえで、同後援会が「私が代表の政治団体でない別団体」である旨を繰り返し強調した。

「週刊文春」編集部は、広島県選挙管理委員会に情報公開請求を行い、「寺田稔竹原後援会」が政治資金の支払いを巡って受領した領収書や振込明細を入手した。「寺田稔竹原後援会」が、寺田氏が主張するように、寺田氏が代表ではない「別団体」なのであれば、領収書や振込明細の宛名は「寺田稔竹原後援会」となるはずだ。

開示された領収書には「寺田稔」宛のものが
 ところが、開示された領収書には、「寺田稔」宛のものが多数含まれていた。2018年からの3年間で「寺田稔」宛は14枚に及ぶ。すなわち、寺田氏が行う政治活動の費用も「寺田稔竹原後援会」が負担し、収支報告を行っていたことになる。

 政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。

「これらの領収書からは『寺田稔竹原後援会』と、寺田氏本人や事務所が実質的に一体の存在であることが窺えます」

 寺田事務所に事実関係の確認を求めたところ、主に以下のような回答があった。

「『寺田稔竹原後援会』の事務処理についての見解は、国会答弁等で申し上げているとおりです」

「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者としていた問題を巡っては、複数の市民グループが今週中にも、寺田氏らを政治資金規正法違反などの罪で刑事告発する方向だ。政治資金を所管する総務省のトップにもかかわらず、自らの政治資金に関する問題が噴出している寺田氏。高い透明性の確保を掲げる政治資金制度への信頼が大きく揺らぐ中、新たに発覚した領収書の存在に対し、寺田氏がどのような説明をするのか、注目される。

 11月1日(火)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および11月2日(水)発売の「週刊文春」では、「寺田稔竹原後援会」の代表者による“重要証言”、寺田氏の新たな政治資金規正法違反疑惑などについても、詳報している。

文春オンライン
10/31(月) 19:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/1cd9aef678a1f61fa55d90e2eee7ca28a56b4b1d