原油高や円安による物価高が続くなか、大阪府が18歳以下に1人1万円のデジタルギフト券(クオカードペイ)を配っている。ところが、ギフト券の調達や配布を請け負う事業者の「企業秘密」が壁となり、ギフト券の利用状況が府でも分からないという。しかも、期限までに使われなかった残額は事業者の懐に入る仕組みだ。どうしてこんな契約になったのか。

吉村知事の肝いり施策

 「物価高騰の影響が広がっていることから、子どもたちに1万円分のクオカードペイをお送りします。文房具、書籍、日用品、ベビー用品などにお使いください」。こんなうたい文句のギフト券が7月以降、大阪府内の家庭に届いている。紙のギフト券ではなく、QRコードをスマートフォンで読み取って使う仕組みだ。子育て世帯を支援するため、吉村洋文知事が肝いりで始めた施策となる。

 対象者は、6月30日時点で府内に住民票があり、2023年4月1日時点で18歳以下の人。所得制限はない。23年2月までに府内で出生届が出された子も受け取ることができる。合計の対象者は約130万人と見込まれ、8月9日時点で対象者の99%に届いている。

 議会では異論もあった。自民党会派が現金での支給や3万円への増額を提案した。しかし府は、現金給付には口座把握が必要で時間がかかるなどとして「ギフト券」や「1万円」は変えず、議会の議決が不要な専決処分で関連予算(約154億円)を組んだ。入札が行われ、商品券「クオカード」を発行する「株式会社クオカード」(東京)などの共同企業体が落札。7月27日、ギフト券の郵送を始めた。府民からは「子どもの絵本を買った」と歓迎の声が上がる。

 吉村氏がギフト券の考えを明らかにしたのは5月30日。「子どもが生活する上で特有の負担が生じる」と必要性を力説した。そこからたった2カ月で配布を始められたのは、吉村氏の意向がある。当初から「夏休みまでには支給したい」と目標を設定していた。これを受け、府が作成した入札の仕様書では7月中に支給を始めることが最重要とされた。一方、利用状況を府が確認できることは盛り込まれなかった。担当者は「スピード重視の施策だったため、入札前の説明もそこに注力した。利用状況の確認は契約後に協議することになった」と話す。

 利用状況を府が確認できないことが公になったのは10月に…

毎日新聞
2022/10/16 17:23
https://mainichi.jp/articles/20221016/k00/00m/040/092000c