本気でこの問題に取り組むつもりはあるのか──。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の解散命令請求をめぐり、新たな動きがあった。

【写真】旧統一教会の“テッシー”こと勅使河原秀行氏、30年前の姿

 消費者庁の「有識者検討会」がとりまとめる提言を、近く河野太郎消費者担当相に提出し、公表する。内容は「宗教法人法に基づく調査を所管庁に求める」ほか、「消費者契約法で定めた契約の取り消し期間の延長」や「不当な寄付・献金を規制する新法制定」を盛り込む。河野大臣も提言を受け入れる見込みだ。

 宗教法人法には解散命令についての規定があり、実際に「調査」が行われれば、結果次第で解散命令の請求につながる可能性がある。

 弁護士の菅野志桜里委員はこれまでの検討会で〈本来であれば、既に宗教法人法の質問権で調査をして、解散命令要求の必要性があるかどうかは判断されるべき。検討会としては、旧統一教会への既存の宗教法人法にのっとった解散命令請求の発動に踏み込むべきだと提言すべき。政府の出番であり、宗教法人法第78条の2の質問権や報告徴収権を使えば、政府は代表役員、責任役員に対して報告を求めることができる〉と指摘。旧統一教会に報告を求め、質問するべきだと主張していた。

 すでに「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)は11日、政府に教団の解散命令を裁判所に請求するよう申し入れている。

 13日の野党国対ヒアリングで、全国弁連の阿部克臣弁護士は「解散命令請求の要件は十分満たしている。解散命令はあくまで法人格を失わせるだけ。財産権や家族破壊など、国民の利益が侵害されている。どちらが重要か」と訴えた。

 これに対し、文化庁は「信教の自由に配慮する必要がある」と、一貫して解散命令請求は難しいという従来の認識を変えなかった。

■全国弁連はフェードアウトを懸念

 政府が解散命令の請求を拒否する代わりに、検討会の提言に乗っかりそうな意図、狙いは何か。全国弁連の弁護士たちは一様にこの動きをいぶかる。そのひとり、代表世話人の山口広弁護士は「急きょ、提言を公表することが決まったそうで、正直、心配しています」と、こう続ける。

「質問権を行使したところで統一教会に時間稼ぎされ、回答が返ってくる頃には世間の関心が薄れてしまうのを懸念しています。岸田首相なり河野大臣が一言、『宗教法人の解散をやれよ』と言えば済む話です。調査するといっても、何も出てこないと思います。統一教会はこれまでの会見で話したようなことしか、言わないでしょう。統一教会が主張する誤りを指摘し、攻撃できる証拠がどれだけあるか。裁判で明らかにすべきです。学者や宗教法人の立場を守れという宗教界の幹部が文化庁の宗教法人審議会で議論したところで、問題は解決しません。ましてや統一教会の実態を知らず、わずか8人だけの文化庁宗務課の職員に何がどこまでできるか、本当に心配してます」

 17、18日には衆議院予算委員会が開かれ、岸田首相への質疑が行われる。まさか、そのタイミングに合わせて岸田首相は「調査」を指示し、「やってる感」を演出するつもりじゃないだろうな。

日刊ゲンダイ
10/15(土) 13:52
https://news.yahoo.co.jp/articles/93aae1198ba333542e0b1868269f7725e9f7986c