政府は、妊娠した女性を経済的に支援する「出産準備金」を創設する方向で調整に入った。月内に策定する総合経済対策の目玉の一つとして、2022年度第2次補正予算案に関連予算を計上する。所得制限は付けずにクーポンで配布する想定で、支給額は新生児1人当たり10万円を軸に与党内で協議する。

 対象者は、自治体に妊娠届を提出し、母子手帳を交付された全ての女性。クーポン形式での支給を行うのは、使途を限定することで、確実に出産や育児に関連する物品やサービスの購入に使ってもらう狙いがある。

 出産前は、産前ケアやベビー服、ベビーカーなどベビー用品の準備、出産後は産後ケアやおむつ、ミルクなどの購入、赤ちゃんの一時預かりなどにクーポンを活用することを検討している。

 クーポンは、妊娠中から生まれた子どもが3歳になるまで使用でき、保育園などに通っていないことを条件とする案が出ている。妊娠期から0~2歳児の育児期までを新たに支援することで、子育て世帯を切れ目なく支援する。

 これに関連し、岸田首相は公明党の山口代表と首相官邸で会談し、23年度予算で出産費用に対応する出産育児一時金を大幅に増額することで合意した。

 政府は、これらの経済的な支援の拡充に加え、保健師や助産師が1対1で母親の相談に乗る「伴走型相談支援」も創設する方針だ。

現在、出産育児一時金は出産時の保険給付として、子ども1人につき原則42万円が支払われている。厚生労働省によると、21年度の平均出産費用(帝王切開などを除く正常 分娩ぶんべん )は約47万円で、一時金を上回った。

 各自治体では、1回5000~1万円の妊婦健診14回分の費用を公費で負担する制度も導入されている。ただ、厚労省によると、妊婦1人当たりの公費負担額は平均約10万円だが、自治体によってばらつきがある。医療機関によっては自己負担が積み重なり、妊婦の負担となっているのが実情だ。

 21年の出生数は過去最少の約81万人だった。新型コロナウイルスの感染拡大による婚姻・出産控えが背景にあるとみられ、妊娠期からの支援の拡充は喫緊の課題となっている。

読売新聞
2022/10/15 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221014-OYT1T50394/