林芳正外相は7日の記者会見で、7〜10日の日程でシンガポールとマレーシアを訪問し、両国外相とそれぞれ会談すると発表した。中国の海洋進出を念頭に「自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた連携を強化する」と述べた。

日本は中国の軍事力拡大を踏まえ、東南アジア諸国連合(ASEAN)へ働きかけを強めており、林氏の2カ国訪問はその一環にあたる。林氏は就任後、ASEANのうちフィリピン、インドネシア、カンボジアを訪れた。岸田文雄首相もカンボジア、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポールを訪問した。

対ロシアで歩調を合わせるよう促す狙いもある。ASEANはウクライナ侵攻への対応でロシアを名指しで批判しなかった。伝統的にロシアと関係が深い国が多く、配慮したとみられている。

台湾有事の懸念は高まっており、対中国でもASEANが同様の姿勢を取れば日米両国は難しい対処を迫られる。外務省の2021年度の対ASEAN世論調査で「今後重要なパートナーとなる国」と聞いたところ、中国との回答が日本を上回りトップだった。

23年は日本とASEANが友好協力関係を築いて50周年の節目にあたる。日本で特別首脳会議の開催も予定しており、対中国・ロシアをにらんだASEANとの関係づくりを一層深める機会につなげる。

林氏は記者会見でシンガポールとマレーシア訪問の目的について「経済や安全保障協力、幅広い分野で2カ国間協力を一層深化する」と説明した。  

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA073OI0X01C22A0000000/