国葬反対を巡る「大陸8割」発言はあったのか、なかったのか――。渦中にいる高市早苗・経済安全保障担当相が明言せず、SNSを中心に臆測が広がっている。こうした事態に、ごまかし答弁を指す新語「ご飯論法」を広めた上西充子・法政大教授は「政府の信頼を取り戻すためにも、きちんと説明してほしい」と指摘する。

 騒動の発端は、三重県の小林貴虎県議(48)=自民=のツイッターだ。2日、次のように投稿した。

 <国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析が出ているという。今日の講演で伺った話。ソースは以前三重の政治大学院でもご講演頂いた事のある現職。>

 投稿は拡散し、「いいね」は1万1000件以上(5日午後6時時点)付いている。これに対し、SNSでは「どこからそんな情報を手に入れたのですか?」「その方のお名前は?」などといった反応が相次いだ。

すると小林氏は4日、「誰が話したかって話ね。高市早苗さんです」と報道陣の取材に答えた。保守系団体「日本会議」の会合が2日に名古屋市内であり、高市氏が安全保障問題について講演した際に「政府の調査結果」として話した内容を基に投稿したと説明した。

 また小林氏は4日、ツイッターにも次のように投稿した。

 <さて皆さん非常に関心が高い様なのでお答えすることにしました。私が総理大臣になって頂きたいと強く願っている高市早苗先生が、政府の調査結果としてお伝えいただいた内容です。ウクライナ戦争で明らかになった様に情報戦争の時代です。我が国も安全保障上取り組むべき課題だと言うお話でした。>

 これを受けて毎日新聞は高市氏の事務所に質問状を送り、高市氏が日本会議の会合で講演した事実はあるのか▽「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析が出ているという」という趣旨の発言をしたのか▽発言をしたのであれば、その根拠は何か――について尋ねた。

 高市氏は4日夜、メールで「日本には、情報操作(偽情報)に対応する法律が無いので、政府は調査することができません。政府が出来るのは、海外の情報機関や企業による調査結果の収集くらいです」と回答し、小林氏が言及した「政府調査」について否定した。

 しかし、高市氏が日本会議の会合で講演したかや、その際「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸から」という趣旨の発言があったのか、については説明がなかった。

 また高市氏は4日、ツイッターに次のように「不正確な情報」と投稿したが、ここでも発言そのものの有無には触れなかった。

 <腕の耐え難い痛みでMRI検査を受けている間に、不正確な情報が。日本には情報操作(偽情報)対策の法律が無いので、政府が調査をすることは出来ません。海外機関による調査情報の収集は可能ですが。国防上の懸念もあり、法整備検討の必要性は3年前に党から提案しました。>

 今のところ真相は不明だが、SNSでは小林氏の発言や投稿内容を疑問視する声が上がる一方で、高市氏の説明を不十分とみなす投稿も出ている。また、「(小林)県議と高市氏のどちらがうそをついているのかはっきりさせる必要がある」といった指摘も見られた。

 政治と報道のあり方についての著書もある上西教授は、毎日新聞の取材に「世論が他国によってゆがめられているのであれば、重要な問題です。デリケートな問題ですが、高市さんはそもそもどんな発言をしたのか、報じられているような発言をしたのなら、どんな根拠で発言したのか。政府の信頼を取り戻すためにも事実関係をきちんと説明してもらいたいです」と話した。

 そのうえで「仮に高市さんが間違ったことを言ってしまったと謝罪しても、辞職を求めるなど追い詰めることはしない方がいいと思います。もしかしたら、高市さんの発言を小林さんが誤解した可能性もある。大事なことは事実関係を明らかにさせ、国民が正しい情報を知り、今後不適切なことが起こらないようにさせることです」と述べた。

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毎日新聞
2022/10/5 21:38
https://mainichi.jp/articles/20221005/k00/00m/010/317000c