岸田首相は23日深夜、国連総会出席など米ニューヨークでの一連の外交日程を終えて帰国した。国連安全保障理事会の改革を訴え、個別会談も精力的に重ねた。「外交の岸田」をアピールして内閣支持率の下落への歯止めを狙ったが、大きな見せ場は作れなかった。

 「(国連総会の)一般討論演説では、国連の理念実現のための日本の決意を表明し、各国首脳と精力的に意見交換を行った」

 首相は24日、自らのツイッターにこう書き込み、今回の外遊を総括した。3日間の滞在中の活動を1分間にまとめた動画も載せ、成果の発信に努めた。

 首相が国連総会で狙いを定めたのが、国連改革だった。20日の一般討論演説ではロシアのウクライナ侵略を非難し、露中の拒否権発動で機能不全に陥る安保理の改革に向け、決議案の交渉開始を訴えた。

 米国のバイデン大統領も演説で安保理改革への意欲を強調し、首相との21日の立ち話で改革に向けた連携を確認した。23日の日米豪印外相会談は、共同声明に「国連改革の推進」を盛り込んだ。実際は改革は容易ではないが、機運を高める「時宜を得た重要な成果」(外務省幹部)となった。

 新型コロナウイルス禍で3年ぶりの完全対面形式となった一般討論演説には、各国首脳らが集結した。この機会を生かし、首相や林外相はそれぞれ各国首脳や外相と会談や懇談に臨んだ。

 ただ、中国、韓国とは現時点で会談しても関係改善は見込めず、慎重に対応した。林氏は国連本部内で中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相と遭遇する可能性に備えて資料を持ち込んだが、首相、林氏ともに中国側と接触することはなかった。

 11月には、中国も含まれる主要20か国・地域(G20)首脳会議などが予定される。首相は22日の内外記者会見で「具体的な対話のあり方について日中で調整していきたい」と述べ、首脳会談を含めて今後の対話には前向きな姿勢を示した。

 首相は韓国の尹(ユン)錫(ソン)悦(ニョル)大統領とは約30分間の「懇談」を行ったが、記者団には一切公開しなかった。自民党内の保守派には、「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」問題などで韓国が国際法違反の状態を是正することが先決で、安易に会談に応じるべきではないとの意見も根強く、首相も身動きが取りづらいのが実情だ。

 22日の内外記者会見やニューヨーク証券取引所での講演では、新型コロナの水際対策の大幅緩和を打ち出し、看板政策の「新しい資本主義」の方向性を説明した。米国の投資関係者に発信すると同時に、日本の世論向けのアピールも狙った。

 26日からは、安倍晋三・元首相の国葬(国葬儀)に伴う弔問外交が始まる。首相は、10月には総合経済対策を策定する方針だ。支持率下落の要因となっている「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の問題は収束が見通せず、政府・与党内では「外交と経済で一つずつ成果を出していくしかない」(自民党ベテラン)との声が出ている。

読売新聞
9/25(日) 12:09
https://news.yahoo.co.jp/articles/530d74ddadc3c88c52c3b4a89f0290650db7fa2d