27日に実施される安倍晋三元首相の国葬を巡り、中止や撤回を求める意見書などを可決する地方議会が相次いでいる。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂元首相以来だが、岸田文雄首相は安倍氏が亡くなったわずか6日後、国会審議を経ないまま国葬とする方針を表明した。国民の間では今なお賛否が割れており、地方からも疑義が噴出している形だ。

 「国葬の実施は国会で決められるべきだ」「国民の賛否が拮抗(きっこう)し、将来に禍根を残しかねない」――。高知県大月町議会(定数10)は15日、安倍氏の国葬中止を求める意見書を全会一致(欠席1人と議長を除く8人)で可決した。町議会事務局によると、8人の党派別は自民3人、公明1人、共産1人、無所属3人。意見書は岸田首相や衆参両議長らに郵送した。

 意見書案を共同提出した浦木秀雄町議(72)=共産=は取材に、「森友学園、加計学園、桜を見る会などの疑惑や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関係が解明されていない」と国葬に反対する姿勢を示した上で「法的根拠が不明確なまま国葬が実施されると、時の政権の一方的な判断が通ることになってしまう」と危機感をあらわにした。

 鳥取県日南町議会(定数10)も8日、国葬中止を求める決議を全会一致(議長を除く9人)で可決。「明確な法的根拠がなく国民の賛否も二分されており、歴代首相の葬儀の実情を鑑みれば国葬を中止すべきだ」とする内容だ。

 決議案を提出した古都(ふるいち)勝人町議(70)=無所属=は「町議たちから『国葬せんでもええ』という声が上がった。安倍元首相が選挙中に倒れたのは痛ましいが、皆に評価されることをやってきたわけではない」と批判する。総額16億6000万円程度とされる概算費用についても「日本はそういう状況ではないはず。田舎で水や山、田畑を守り、日本を支えてきた高齢者が2、3万円の出費に困っているのに」と疑問を投げかけた。

少なくとも12市町村議会が反対

 毎日新聞の集計では、大月町や日南町を含め、東京都国立市、神奈川県鎌倉市、長野県大鹿村など少なくとも12市町村の議会が国葬中止や撤回を求める意見書や決議を可決している。

 その他、国葬の根拠となる法整備を求める意見書(長野県伊那市議会)や国会での徹底審議や弔意を強要しないことを求める意見書(北海道日高町議会)なども可決されている。【野口由紀、宮川佐知子】

毎日新聞
2022/9/21 17:23
https://mainichi.jp/articles/20220921/k00/00m/010/187000c