「試験は絶対に受けない」と白紙の答案を提出
《しばらくして「採用試験をやるから受けろ」と連絡があった。私は「試験をやって、その成績が悪いのを理由に採用しないつもりだな」と思ったので「試験は絶対に受けない。水野社長との約束を守ってほしい」と言い張った。》(同前)

 すごい。つまり、「さては試験をやって俺の頭の悪さを証明するつもりだな! その手には乗らん!」という作戦である。自分のことを知り尽くす森喜朗。しかし担当者が「試験を受けないと採用しない」と言うので、

《仕方なく試験は受けた。試験では白紙の答案を出し、最後に「天下の水野社長は前途有為な青年をつぶしてはならない」と書き加えた。》(同前)

 ここまでくると図々しさに感心してしまう。

 これらは自著である『私の履歴書 森喜朗回顧録』に普通に載っている。こんなことばかり言って、日経新聞での連載時には問題にならなかったのだろうか? すると2013年12月に出版されたある本で次の箇所をみつけた。

 対談相手が「こう言っちゃ悪いけど、森さんは産経も早稲田も試験を受けずに入ったわけね」と尋ねると、森喜朗は陽気にこう答えている。

《そら、ちゃんと試験を受けていますよ。多少は下駄を履かせてくれたと思うけどね。日経新聞の「私の履歴書」でも、ぼくが勉強もしないで入学したということになっていて、大学が大騒ぎした(爆笑)。》

「爆笑」してるのである。怪しい入学方法が持ちネタになっているのだ。なんという図太さ。

「講談社だけは相容れない」じゃなかったの?
 この対談が収録されているのは『日本政治のウラのウラ』という森喜朗の本で、聞き手が田原総一朗であった。講談社から出ている。

 ……え?

 あーー、講談社からゴキゲンに本を出してるじゃん! 「講談社だけは絶対、私は相容れないんですよ」じゃなかったの? (週刊文春 9月15日号)

 しかも森喜朗が怒ったとされる「週刊現代」や「FRIDAY」の記事が出たあとの2013年に出版されている。いい加減だなぁー。

 しかし、森喜朗が講談社を排除して五輪スポンサーにしたというKADOKAWAが、汚職に手を染めていたとなると笑ってすまされない。元組織委会長としてすぐに記者会見をするべきではないか。どれだけ組織ぐるみで腐っていたか? もしくは今回の件は検察の暴走なのか? たくさん説明すべきことがあるはず。五輪には税金も投入されているのだ。森喜朗先生、記者会見をしてください。「時間がかかる」のは大歓迎です。きちんと説明してください。

 胸像を建てるのはそれからだ。

プチ鹿島