安倍晋三元首相の国葬(27日予定)を巡り、知事らが公費で参列するのは不当だとして、首都圏の弁護士らが15日、神奈川県など2県2市の首長らの公費支出差し止めを求め、それぞれ住民監査請求した。国葬の違憲性や、法的根拠に欠けることなどを理由としている。(志村彰太、竹谷直子、長崎高大)
 「国葬は憲法に真っ向から反している。安倍元首相の実績も国論を二分していることは間違いなく、国葬にはふさわしくない」と指摘したのは、神奈川県庁で記者会見した藤田温久弁護士。県内の弁護士や市民有志らとともに、黒岩祐治知事と山中竹春・横浜市長らが参列する場合の公金支出差し止めを求めた。
 住民監査請求書で、国葬は「故人に対する敬意や弔意を持ち合わせない人も含め、(追悼の意を)国中の人々に強いる」として思想・良心の自由を保障した憲法に違反すると主張。安倍元首相を巡る森友・加計学園と「桜を見る会」の問題や、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法の制定、世論調査で国葬への反対が過半数であることなどから「国葬の実施の不当性は明らか」とした。
 川崎市では、福田紀彦市長と橋本勝市議会議長が公費で参列するのは違憲・違法として、市民4人が請求。請求人代表の橋本清貴さん(72)は「法令がなく閣議決定でできるとは、日本は専制国家になっているのでは。せめて衆参(両院)で議論すべきだ」と訴えた。
 茨城県では弁護士有志12人が、大井川和彦知事と伊沢勝徳県議会議長の国葬出席に伴う公費支出の差し止めを求めた。県庁で記者会見した谷萩陽一弁護士は「知事や議長が公費で出席することは、法の適正な執行を確保する見地から見過ごすことはできない」と訴えた。これまでに北海道、京都府、大阪府、兵庫県、広島県などで同様の住民監査請求がされている。

東京新聞
2022年9月15日 22時06分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/202424