安倍晋三元総理の「国葬」が世論の猛反発を受け、追い込まれた岸田文雄総理。もはや残された武器は、総理大臣のみが振るうことのできる「解散総選挙」の決断しかない……前編記事『安倍「国葬大失敗」で岸田総理がヤケクソ…! この秋、イチかバチかの「電撃解散・総選挙」へ』に引き続き、驚きの戦略の全貌をお伝えする。

安倍の前例に学んで

 政権発足から丸1年たたずして、岸田の進退は窮まった。もはや打開策は、ひとつしか残されていない。総理大臣だけが持つ、政界唯一にして最強の「宝刀」を抜く――国葬直後に衆院解散・総選挙に踏み切って、すべてをリセットするのだ。

 参院選での勝利により、国政選挙のない「黄金の3年」を手にしたといわれていた岸田だが、実は安倍の銃撃事件の発生からまもなく、早期解散のタイミングを計ってきたという。岸田派所属のベテラン議員が言う。

 「来年春には統一地方選があるから、その前後に解散を打つのは公明党が反対する。5月になると広島で開催するG7サミットに忙殺される。党内でも多くの議員は『解散があるとしても、サミット終了後の来年夏以降だろう』とのんびり構えていますが、総理はずっと『支持率が持たなければ、年内に解散を打つ』カードを温めていたのです」

 前例がある。安倍もかつて、森友学園・加計学園・桜を見る会と立て続けに不祥事に見舞われた'17年の秋、衆院解散に活路を見出した。「国難突破解散」という意味不明なスローガンをぶち上げ、政権浮揚目的の選挙であることは見え見えだったが、それでも選挙後には支持率が10ポイントも上がり、みごと「目くらまし」に成功した。

「このままでは追い込まれる」

 「ここで解散を先延ばしにすると、結局タイミングを逸して『追い込まれ解散』になる可能性が高い。それだったら『統一教会との関わりを断てない候補者は公認しない』とお触れを出せば、安倍派の議員を中心にウミを出せるし、『関係を清算した』という大義も作れる。自民党が野党に大負けする可能性は100%ないのだから、多少議席を減らす覚悟で早期解散するのがベストなのです。

 憲法改正は遠のくでしょうが、(ハト派の)宏池会の岸田総理としては、それで別に問題ない」(自民党幹部議員)

 ちょうど5年前の9月28日、安倍が臨時国会冒頭解散に踏み切った際、野党は「国会論戦を封じる暴挙」と騒いだ。しかし自民党は議席を減らすことなく圧勝、死に体の政権は息を吹き返し、'20年夏に安倍が電撃辞任するまで続いた。岸田が狙っているのは、その再現に他ならない。

 もうひとつ、岸田がすぐにでも解散を打たなければならない大きな理由がある。自民党に巣くう二人の「妖怪」――前総理の菅義偉、そして元幹事長の二階俊博が、政権の窮状を察して舌なめずりを始めたのである。

 9月1日、菅と二階は六本木の高級鉄板焼き店「ステーキハウス ハマ」の個室に入った。いつものように菅の口数は少ないが、二階は饒舌だ。菅を呼ぶ際に「総理」と敬称を添えて、こう語った。

 「岸田政権は、もうガタガタですな」「統一教会の件で無傷なのは菅総理だけだ。政権がこのまま行き詰まるようなら、前面に出てもらわないと」

河野太郎の不穏な動き
 二階が念頭に置いているのは、菅と自らの「再登板」である。このまま岸田や茂木が状況を打開できなければ、党内で「菅待望論」そして「二階待望論」が出てくるに違いない。事実、岸田や茂木の下では選挙を戦えないと不安を漏らし始めた議員は、すでに少なくない。

 しかし菅は、自分が再び矢面に立てば、前政権の二の舞になると考えている。そこで目論んでいるのが、二人の「駒」を動かすことだ。

 先鋒は去年の総裁選で、麻生派所属ながら菅の全面支援で岸田と戦った、河野太郎である。

 「総理は河野さんをデジタル大臣にして閣内に封じ込めようとしたが、選挙に強く統一教会の助けをほとんど受けていない河野さんは、霊感商法対策の検討会を作ったり『統一教会には解散命令を出してもいい』と言ったりと、スタンドプレーしまくっている。それでも総理が何も言えないのは、菅さんがバックにいるから」(菅と近い自民党議員)

2に続く

現代ビジネス
9/14(水) 7:33
https://news.yahoo.co.jp/articles/14bdf44e0ec5f19a76d33bf5bfad833abaebc6d2