信濃毎日新聞社は10日、政府が27日に実施する安倍晋三元首相の国葬や、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係について県民1035人に聞いた緊急電話調査の結果をまとめた。安倍氏の国葬に「反対」は68%と「賛成」の16%を大きく上回り、県民が否定的な見方を示していることが鮮明になった。国葬を巡る岸田文雄首相の説明は69%が「納得できない」と回答。説明の不十分さも浮き彫りになった。

 岸田首相は8日、国会の閉会中審査で安倍氏の葬儀を国葬とした理由などについて説明。自民は同日、党所属国会議員179人に旧統一教会側と何らかの接点が確認されたとする結果を公表した。調査はこれを受け、JX通信社(東京)と共同で9、10日に実施した。

 安倍氏の国葬に反対する理由は「国葬にふさわしい業績や功績を残していない」が42%と最多。安倍氏を巡っては経済政策「アベノミクス」や安倍外交など在任中の実績への評価は割れている上、森友、加計学園や「桜を見る会」の問題は今も根強い批判があり、こうしたことが背景にあるとみられる。

 2番目に多かったのは「多額の費用がかかる」で21%、3番目は「法的根拠があいまい」で16%だった。政府は閣議決定で国葬の実施を決め、全額国費となる費用は概算で総額16億6千万円程度としている。「岸田政権が拙速に実施を決めた」は12%だった。

 賛成する理由で最も多かったのは「国葬にふさわしい業績や功績を残した」で63%だった。憲政史上最長の8年8カ月の在任期間を挙げたのが14%、参列する各国要人との「弔問外交」が期待できるとしたのが12%。安倍氏の国葬の賛否について「どちらとも言えない・分からない」は17%だった。

 岸田首相の国葬を巡る説明に「納得できる」は12%にとどまり、「どちらとも言えない・分からない」が19%。「納得できない」は60代で71%、70代で74%と高かった。

 政党支持率は、自民21・7%、立憲民主17・2%、日本維新の会3・0%、公明1・8%、共産5・5%、国民民主1・5%、れいわ新選組1・5%、社民1・6%、NHK党0・3%、参政党1・3%で、無党派層は43・8%だった。

(調査結果は政党支持率を除き、小数第1位を四捨五入した)

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 【調査の方法】県内の有権者を対象に9、10日の2日間、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施。実際に有権者がいる世帯にかかったうち、1035人(男性527人、女性508人)から回答を得た。

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【安倍晋三元首相の国葬】 参院選で街頭演説中の安倍元首相が7月8日に銃撃され死去したのを受け、政府が主催する葬儀。27日午後2時から、日本武道館(東京)で行われる。全額国費で賄い、政府は警備費や外国要人の接遇費など概算費用として総額16億6千万円程度と説明。戦後、首相経験者の国葬は1967(昭和42)年の吉田茂元首相以来、2例目となる。

信濃毎日新聞
2022/09/11 00:03
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022091000785