こんな「結果発表」に何の意味があるのか。

 自民党の茂木幹事長が8日、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と所属国会議員379人との関わりを確認する調査結果を発表した。何らかの接点が確認された議員は179人と半数近く。このうち、特に関係が深い121人の氏名を公表した。

 教団側に選挙支援を依頼したのは、斎藤洋明衆院議員と井上義行参院議員の2人。選挙でボランティア支援を受けたのは衆院14人、参院3人だというが、質問項目に「分からない」が途中から追加されたこともあり、実態把握には程遠いとの声が党内からも上がっている。

 茂木氏は神妙な顔つきで「結果を重く受け止め、今後、教団側と一切関係を持たない党方針を徹底する」と話し、幕引きをはかる姿勢がアリアリだったが、こんな上っ面の調査で国民が納得できるはずがない。なにしろ肝心の安倍元首相と細田衆院議長は調査対象外だからだ。

 安倍元首相は選挙で教団票を差配するなど、旧統一教会との関係の元締的な存在だったことが分かってきた。教団関係のイベントにビデオメッセージを送り、それが銃撃死のきっかけになった可能性も高い。亡くなった人に聞くことはできないが、事務所には記録や資料が残っているだろう。なんなら旧統一教会に洗いざらい話してもらってもいい。

「国民の理解を得られない」

安倍派に代わる前に派閥会長を務めていた細田氏も、教団との親密な関係が知られている。旧統一教会の関連団体と自民党議員が参加する「日本・世界平和議員連合懇談会」の名誉会長を務め、昨年、議員会館で開かれた議連の総会でも、教団の政治団体トップ・国際勝共連合の梶栗正義会長と笑顔でポーズを決めていた。

 2019年に名古屋で開催されたイベントにも出席して教団トップの韓鶴子総裁を称え、「今日の盛会、そして会の内容を安倍総理に早速報告したい」と声を張り上げる映像が残っている。

 週刊文春によれば、衆院選で細田陣営の選対本部長を長年務める県議は旧統一教会関係者だという。

 議長は党籍を離脱しているから対象外と茂木氏は言うが、慣習で一時的に会派を離れるだけで、議長職を終えれば戻ってくる。そもそも自民党の公認で選挙に出て議員になったのだし、今も自民党HPには所属議員の欄にしっかり「衆議院議員 細田博之 島根県第1区」と紹介されている。

「疑惑の議長を調査対象外にしたのでは国民の理解を得られない。そもそも、旧統一教会がどのように政治に浸透してきたか、政策に影響を与えてきたのかを調べなければ、調査の意味がないでしょう。それには、岸信介元首相の代から続く安倍元首相と教団の関係をつまびらかにする必要がある。ポーズだけの調査でお茶を濁せば、かえって国民の批判が高まるだけで、総裁から指示を受けた茂木幹事長が無能のレッテルを貼られます」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 8日の閉会中審査で、安倍元首相と教団の関係を調査すべきだと指摘された岸田首相は「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」と繰り返していたが、そこをハッキリさせてケジメをつけなければ、「旧統一教会と一切関係を持たない方針」なんて絵に描いた餅に過ぎない。

 安倍元首相の国葬では、三権の長の一角として細田氏が追悼の辞を述べる。親密議員2人の国を挙げての“共演”に旧統一教会は喜ぶかもしれないが、まるでブラックジョークだ。 

日刊ゲンダイ
9/9(金) 14:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2fb57a1dc5997e7f89fd0587415aaab972f47508