安倍元首相の国葬をめぐり、ようやく岸田首相が8日に国会で説明したが、これで一件落着とはなりそうにない。

 説明を聞いて国葬反対派が賛成に転じることは考えにくいし、今さら葬儀を取りやめることもできず、強行すれば批判の声が高まるのは確実。ニッチもサッチも行かない状況に岸田首相を追い込んだ“元凶”は2人の大物だという。

■「理屈じゃねえんだ」

 写真週刊誌「FLASH」最新号が、国葬決定までの経緯をこう報じている。

<安倍さんが亡くなった直後は、内閣と自民党の合同葬を開く方向で話が進んでいました。それを巻き戻したのが麻生太郎副総裁で、“保守派が騒ぎだすから”と、岸田さんに3回も電話をしたそうです。最後は『これは理屈じゃねんだよ』と、強い口調だったといいます。国葬実施の方針が決まったのは、7月14日の会見の1時間前でした>

 安倍氏が7月8日に銃撃されて死亡し、6日後の14日に岸田首相が記者会見を開いて国葬を行うと表明。その間に麻生氏の猛プッシュがあったというのだが、「理屈じゃねえ」で決めてしまったのなら、国民が納得する説明などできるはずがない。

「祖父の吉田茂元首相の国葬が行われた1967年は麻生さんが27歳の時で、当時の印象が鮮烈に残っているはずです。盟友の安倍さんを手厚く送ってやりたいという気持ちの表れでしょう。国葬と決まった時には、菅前首相も『それがいい』と周囲に話していました。しかし、旧統一教会と安倍さんとの親密な関係が明らかになり、日増しに国葬反対の声は増える一方で、岸田さんは頭を抱えている。国葬をゴリ押しした麻生さんもダンマリを決め込んでいます」(自民党関係者)

 一方、「国葬後に明らかにする」としていた経費の概算を「総額16.6億円」と急に公表したのは、菅氏のアドバイスを受けてのことだという。

 岸田首相は5日に菅氏の国会内事務所を訪れて面会し、国葬で友人代表としての弔辞を依頼。菅氏は快諾したとされる。

■概算費用「16.6億円」公表も裏目

 6日の神奈川新聞によると、この面会の際に菅氏は、国葬費用について「分かる範囲で数字をまとめて早めに明らかにしてはどうか」と促した。「動いても動かずとも批判されるのなら動くべきだ」と励ましたという。

 だが、事前に示した見積もり「16.6億円」より費用が大幅に増えれば、ますます世論の反発を招く。

 岸田首相本人が国会で説明することにも「火だるまになるだけ」との懸念が党内にある。

「麻生氏も菅氏も悪気はなくて、安倍元首相や岸田首相のためを思って助言したのでしょうが、ことごとく裏目に出ている。それを周りは遠巻きに見ていて、全力で首相を支えるという雰囲気ではない。特にポスト岸田首相を狙うような人々は様子見ムードです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

 麻生氏と菅氏に対して自慢の「聞く力」を発揮したとしても、最終的に国葬を決めて発表したのは岸田首相自身。火だるまになっても自業自得だ。

日刊ゲンダイ
22/09/09 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/311045