台湾周辺で演習をした中国の狙いは。
 台湾への懲罰という側面と、新しい常態をつくろうという側面がある。日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイルが着弾したが、主たる狙いは台湾に対する威嚇だ。中国大陸から台北上空を飛行させて東側の海に落とすと、どうしても日本のEEZに入る。
 ただ、入ると分かってやるわけだから、日本に対する配慮は必要がないという判断があった。米国に協力すれば軍事的に巻き込まれることを示す機会として使ったということだと思う。
 ―国家安全保障戦略改定へ何を議論すべきか。
 物理的な打撃手段を使わない「ハイブリッド戦」をどう戦うかだ。侵攻前のハイブリッド戦が相手の社会の強靱(きょうじん)性を失わせることを目的にするものだとすると、例えば物流を遮断して食べ物などを入らなくすると同時にライフラインや情報を遮断するといった手段になる。
 もう一つは邦人救出。中国が台湾に武力侵攻すれば広い範囲で海上・航空封鎖がかかり、南西諸島は中国軍のコントロール下に置かれる。(救出のために)ここに向かう自衛隊の船や航空機は中国軍の封鎖海空域に入らなければならない。戦闘が起こる可能性もある。
 米国が台湾に武器支援をする時にどこを経由するのが一番いいか。やはり日本が一番信頼できるし地理的にも効果的だ。そういった要請が来るかもしれないことも理解して議論しておくべきだ。
 ―継戦能力の強化や反撃能力の保有は。
 継戦能力がないのは怠ってきたことなので、本来あるべき状態に戻さなければいけない。弾がないのでは大砲が無駄だ。
 米国をいかに引き込むかという努力は日本も台湾も必要だ。抑止とは認識の問題だ。「米国が関与する」と中国が信じれば抑止が効く。反撃能力は自らの能力として一部を持たなければ米国は関与してくれない。

外交で解決すべきだとの意見もある。
 外交努力はもちろん必要だが、軍事力の裏付けが必要だ。中国が軍事的に圧倒的に有利だと考えたままで外交を展開しても全く影響力はない。日米が抑止力を強めようとしているから、中国は今、将来予測が少し悲観的になっている。中国が軍事侵攻できない状態をつくらなければならない。
 ―日台関係を強化すべきか。
 政府、社会、作戦という三つのレベルで情報共有できる枠組みをつくっておくべきだ。中国はまずハイブリッド戦などで(台湾の)情報的な孤立を図る。情報がないまま軍事作戦への(自衛隊の)協力を米国に要請されることもあり得る。日本としてどう反応すべきか、その根拠となる情報を自ら得られないことになりかねない。

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