安倍晋三・元首相(67)が銃撃されて死亡した事件で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長が10日、東京都の日本外国特派員協会で記者会見した。2015年に統一教会から名称変更が認証された経緯について、難色を示す文化庁に、訴訟を辞さない意向を伝えていたことを明らかにし、「政治介入や不正はなかった」と説明した。

 田中会長は会見の冒頭、「容疑者の動機が家庭連合への恨みであるという報道を重く受け止め、社会をお騒がせしたことを深くおわびする」と、事件後初めて謝罪の言葉を口にした。

名称変更について田中会長は「文化庁に何度も相談したが、対応が変わらず、訴訟もやむを得ないと決意し、専門家の意見書を付けて意思表示すると受理された」と説明。「『正体隠し』という批判は事実無根の決めつけ」と主張した。

 政治との関係については「友好団体が強く関わってきたことは事実」とした上で、「宗教法人として、特定の党のみを応援するという態度は取っていない」と主張。「共産主義と 対峙たいじ し、民主主義を守ろうとする同志と歩んできた。その視点から自民党議員と接点を持つことがあった」と述べた。

 岸田首相が新閣僚らに同連合との関係を断つよう求めたことについては「報道に揺れる世論への気遣いがあったことは否定できず、遺憾に思っている」とした。

 同連合を巡っては、1980年代以降、霊感商法が社会問題となり、信者が逮捕される事件も起きた。しかし、田中会長は「当法人が霊感商法を行ったことは過去も現在もない」と述べ、献金などを巡って裁判中の事案は1998年の78件から今年は5件に減少したと強調。2009年の「コンプライアンス宣言」以降、「社会的、法的に問題がある行動をしないよう信者に指導を徹底している」と述べた。

 これに対し、同連合による被害救済に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、昨年までの5年間に564件の相談が寄せられ、被害は今も続いているとしている。

 連絡会の紀藤正樹弁護士は「会長の発言は実態とかけ離れ、被害に誠実に向き合う姿勢が感じられない。旧統一教会の問題には、家庭崩壊の被害もあるが、そのことに全く触れていない。謝罪の言葉を口にしたが、何への謝罪かわからず、体質は変わっていない」と批判した。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220810-OYT1T50248/