岸田文雄首相の16日夜の記者会見前に、官邸報道室が、質疑応答で指名しなかった記者のメールでの質問を今回は受け付けないと一部の新聞社に通告していた。会見終了時に抗議を受け、進行役の内閣広報官が一転して認めたが、質問機会を制限しようとした形だ。首相が掲げる「聞く力」が問われそうだ。

 メール質問は安倍晋三首相時代の2020年4月、内閣広報官が会見を打ち切ろうとした際に提案し、その後定例化した。首相は後日書面で回答し、ホームページでも公開している。

 官邸報道室長は16日午後、北海道新聞に「メール質問は無しにする」と伝えた。理由は「最近の会見で多くの社が質問できている」とした。北海道新聞は承服できないと返答し、「きょうの会見で道新を指名しないと決めた上での連絡か」とも尋ねた。室長は「そうではない」と述べた。

 会見は開始から1時間超が経過し、複数の記者が挙手する中、内閣広報官が終了を宣言した。メールで質問を受け付けるとの告知はなかった。北海道新聞などが「書面質問はどうなのか」と声を上げ、内閣広報官は「今、手を上げている方はメールで」と応じた。

 官邸報道室によると、メール質問を受け付けないと通告した相手は北海道新聞、東京新聞、京都新聞。いずれも同日の会見で指されなかった。首相会見は安倍政権時代から指名する社の偏りが指摘されていた。報道室は取材に対し「よくメールで質問している印象がある社に、参考まで状況を伝えた」と回答した。

北海道新聞
03/20 11:46
https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/659058