2025年大阪・関西万博のアクセスルートに位置づけられる高速道路「淀川左岸線」の2期区間の工事で地盤の異常が判明し、万博までの全通が困難になったことが1日、関係者への取材で分かった。事業主体の大阪市は代替の仮設道路を整備し、万博期間中の暫定的な利用を検討している。左岸線の2期区間については工法の変更を迫られる見通しで、整備費が想定より1千億円程度膨らむと市が試算していることも判明した。

2期区間は海老江(大阪市此花区)−豊崎(同市北区)間の総延長4・4キロ。市は淀川の堤防を開削し、箱型のトンネル(東西各2車線)を埋設。周辺環境への影響を考慮し、完成時は大部分がトンネル構造となる。阪神高速道路株式会社との共同事業で平成30年10月に着工した。

開通は当初令和8年度末を予定していたが、万博開幕に間に合うよう工期を2年前倒し。7年4〜10月の万博会期中には、新大阪駅や大阪駅など万博来場者を運ぶシャトルバスの専用道としての使用を想定していた。

しかし昨年9〜10月、区間内の一部地点で軟弱地盤の改良工事を行った際、地盤の変状現象が見られ、近接民家にある花壇の擁壁などにずれが生じた。市はすでに応急処置を施したが、工事の影響とみている。

このため当該地点で工事を見合わせ、工法の変更も検討。その結果、安全性を確保するための新たな工法や、地中障害物の除去、軟弱地盤への対策が必要となり、約1千億円の増額リスクがあると見込んだ。

一方で、市としては万博までにアクセスルートが通らない事態は避けなければいけない事情もあり、代替路として、地上に車道を通す方向に傾きつつある。

市は万博で左岸線の2期区間を「暫定利用」するとしているが、これまで暫定利用の形態を公表していない。

市建設局の担当者は産経新聞の取材に「地盤変状も含めて工程を整理し、着地点を見いださないといけない。トンネルが通らなくてもアクセスルートの機能に問題はない」と話した。

2期区間をめぐっては、土壌汚染や地中障害物が確認され、2年に当初1162億円と見込んでいた整備費がすでに756億円増えている。

産経新聞
2022/3/2 06:00
https://www.sankei.com/article/20220302-KYTQ3T67JFNVTIII4S2PJH62UM/