岸田政権の新型コロナ対策が「お手上げ」状態だという象徴だ。濃厚接触者に症状が出た場合、医師が検査することなく陽性と診断する「みなし陽性」の導入が、21都道府県にまで拡大している(4日時点、読売新聞調査)。毎日10万人規模の新規感染者が出る中、医療資源を重症化リスクの高い人に振り向けるということだが、現実に「みなし陽性者(疑似症患者)」と診断されれば不安だし困惑する。結局その実態は、陽性者に究極の自助を強いる“みなし放置”である。

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「自宅にあった抗原検査キットで調べたら、子どもが陽性になった。対応してくれるクリニックがなく、ようやくオンライン診療が見つかったら、その場で子どもは陽性診断。私も喉が痛いなど症状を話したら、『それは感染していますね』と言われ、検査なしで陽性となりました」

 神奈川県在住の40代女性のケースだ。症状がある同居家族は「みなし陽性」、無症状者は濃厚接触者となったという。

「困ったのはその後です。保健所から連絡が来ると言われたけれど、なかなか来ない。仕事や学校をいつまで休まなければいけないのか、期間が分からない。神奈川では食料や水はもう届かないみたいで、買い出しなら出かけていいとか。外に出て大丈夫なんでしょうか」

 神奈川は「みなし陽性」の制度で“最前線”を走っている。検査どころか医療機関の受診なしで“自主的”に陽性判断する仕組みも導入。自宅療養者が最小限の買い出しをする場合は、外出自粛の例外として容認した。

保健所と連絡も取れず、健康観察は自分で

驚異的な感染力のオミクロン株の主戦場は家庭内感染と自宅療養だ。厚労省の最新発表(2日午前0時時点)では、自宅療養者は過去最多の43万人超。療養先調整中で自宅待機中の18万人超を加えると60万人もが自宅に放置された状態だ。

保健所と連絡も取れず、健康観察は自分でやる。自宅療養のサポート体制は乏しい。オミクロン株が重症化しにくいとはいえ、急に体調が悪化したら不安で仕方ない。

「コロナ戦記 医療現場と政治の700日」の著者でノンフィクション作家の山岡淳一郎氏が言う。

「検査キット不足で『みなし陽性』にせざるを得なくなったのです。仕方なく対応策のハードルを下げただけの現状追認。新しい制度でも何でもない。『みなし公務員』じゃあるまいし、生物学的現象を『みなし』とするゴマカシには、日本のコロナ対策はここまできたか、という思いです。自宅療養の体制も、昨年10〜12月の感染者が落ち着いている時期に、保健所ではなく診療所が窓口になるよう整備しておくべきでした」

 棄民政策の岸田政権では、自宅療養者が膨張するばかりだ。

日刊ゲンダイ
22/02/08 06:00
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