毎日新聞の28日の世論調査で、内閣支持率が過去最低の26%に落ち込んだことで、政府・与党は「危険水域に入った」と危機感を強めている。次期衆院選が迫る中、自民党内で「菅離れ」が進み、9月29日投開票の党総裁選の情勢が流動化する可能性もある。

 自民の野田聖子幹事長代行は28日、支持率低下について「新型コロナウイルスのデルタ株への国民の不安を払拭(ふっしょく)できていないことが大きく、謙虚に受け止めたい。コロナ対策と発信を強力に進めなければならない」と語った。公明党の山口那津男代表は「『政府・与党がしっかりしろ』という厳しい指摘だ。的確に医療サービスが行き届いていない。やれることは全てやらなければならない」と述べた。

支持率26%は、第2次安倍政権で最低だった2017年7月と並ぶ数値だ。この時は「森友・加計学園問題」への批判が高まり、自民は直前の東京都議選で歴史的な大敗を喫した。官邸幹部は「この時と同じということは、最も懸念する岩盤支持層の崩壊にはなっていない」と強調する。

 菅義偉首相はワクチン接種を進めて新型コロナの感染状況を好転させ、政権浮揚につなげたい考えだ。総裁選の論戦で政権のコロナ対策に理解を得たい思惑もある。

 だが、自民党支持層の内閣支持率は61%にとどまり、7月の前回調査の69%から8ポイントも減少。党内でも首相や政権への不満が高まっている。立候補を表明した岸田文雄前政調会長が率いる岸田派の中堅は「ここまで来るとワクチンだけでは評価されない。首相で衆院選は大丈夫かという声はますます増える」と語る。党ベテランは「首相の首をすげ替えないといけないのではないか」と指摘。別の党関係者は「もう何をやってもしょうがない状況になってきた」と漏らし、閣僚経験者も「最悪のコースをたどっている」と語るなど厳しい声が相次ぐ。

 首相への批判が高まり、総裁選の行方は急速に不透明になっている。党重鎮は「党勢回復のためには、きちんと総裁選をしなければいけない」と述べ、二階派議員は「総裁選を追い風にしないといけない」と話す。だが「支持率はここが底なのかは、まだわからない」と不安視する意見は根強く、「党の顔が変わっても、中身が変わらないと意味がない」との見方もある。若手の一人は「この悪い雰囲気が収まるのか、どうしようもない所まで行き着くのかだ」と情勢を慎重に見極めている。

 一方、立憲民主党の福山哲郎幹事長は取材に「政権の無為無策のコロナ対応を国民が評価しないのは当然だ。一日も早く臨時国会を開き、補正予算も組んで国民の生活を守らなければならない」と訴えた。共産党の小池晃書記局長は「菅政権に圧倒的な不信任が突きつけられており、政権は真剣に受け止めるべきだ」と強調した。だが、野党各党の支持率の大幅な上昇は見られない。野党幹部は「そんなに甘くはない。野党の支持率が上がっているわけではなく、野党共闘の姿を一刻も早く国民に見せる責任がある」と述べた。【田中裕之、加藤明子、野間口陽】

毎日新聞
2021/8/28 23:07
https://mainichi.jp/articles/20210828/k00/00m/010/344000c