自民党総裁選は「9月17日告示、同29日投開票」の日程が決まり、目前に迫った衆院選の「顔」選びが事実上スタートした。再選を目指す菅義偉首相が頼る二階俊博幹事長は、いち早く再選支持を打ち出したが、足元の二階派内では異論が噴出。岸田文雄前政調会長が2度目の挑戦を表明し、各派閥も相次ぎ会合を開くなど、党内の動きが一気に活発化した。

◇怒号

 26日、二階派の在京議員懇談会。欠席した二階氏に代わり、同派幹部が再選支持の方針を説明すると、10人近い所属議員から「意思決定はみんなの意見を聞くべきだ」「メンバーが生き残れる道を考えてほしい」と再考を求める声が続出。首相を公然と批判する怒号も飛び交ったという。
 二階氏は24日の記者会見で、他派に先駆け、派閥として再選支持を表明。最大派閥・細田派出身の安倍晋三前首相、第2派閥・麻生派会長の麻生太郎副総理兼財務相も同様の立場で、現時点で首相優位とみられている。
 それでも、結束力の強さを誇る二階派内の「反乱」は、中堅・若手を中心に「首相で衆院選は戦えない」との危機感が根強い現状を、改めて浮き彫りにした格好。同派幹部も「丁寧に意見集約していく」と引き取らざるを得なかった。

◇「反菅」票
 これに対し、岸田氏は自身が率いる岸田派の会合で、「総裁選が自民党のこれからにつながる。衆院選やさまざまな政治課題を乗り越える上で大きな意味があると確信して戦いたい」と述べ、首相に論戦を挑む姿勢を鮮明にした。
 派内には、現職首相と争うことへの慎重論も根強かった。それを押し切った岸田氏が望みを託すのが、党内にくすぶる「反菅」票だ。党員・党友による地方票も勝敗を大きく左右するため、同派幹部は「党員を味方に付ける」と意気込む。
 党内各派も一斉に走りだした。石原派は26日の会合で、今後の対応を会長の石原伸晃元幹事長に一任。この後、石原氏は記者団に「首相を支えていく」と明言した。ただ、所属議員の一人は「誰を支持するか悩んでいる」と心中を吐露した。
 麻生派は、麻生氏ら約10人が対応を協議。竹下派の会合では、会長代行を務める茂木敏充外相が「菅政権を支える基本方針が変わっているわけではない」とした上で、所属議員の意見を踏まえて判断する方針を示した。派閥横断の若手グループ約15人も集まって意見を交わした。
 ◇高市、下村氏も
 一方、無派閥の高市早苗前総務相は26日、党本部で記者団に対し、出馬への意欲を改めて強調。安倍政権の継承を掲げて推薦人の確保を目指す。党内には「反菅」票が岸田氏に集中する事態を避けるため、「二階氏や安倍氏が推薦人を貸すのではないか」(幹部)との見方が出ている。
 細田派の下村博文政調会長も、東京都内で記者団に「出たいと思っている。関係者の理解を得て進めたい」と語った。派内には党幹部の出馬を疑問視する声もあるため、「総裁選になれば(政調会長の)代理を立て、政策の停滞を生まないよう責任を持ちたい」と説明した。

時事通信
2021年08月27日07時08分
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