菅義偉首相(自民党総裁)の9月末の任期満了に伴う総裁選で、複数の議員が出馬を目指して動きを顕在化させてきた。高市早苗前総務相が10日発売の月刊誌「文芸春秋」で意欲を表明するのに加え、中堅・若手も独自候補擁立を模索。首相の「後見役」の二階俊博幹事長が狙う無投票再選に暗雲が漂いつつある。

 高市氏は同誌で「社会不安が大きく課題が多い今だからこそ、総裁選出馬を決断した」と強調。「『美しく、強く、成長する国』を創るため国家経営のトップを目指し、『日本経済強靱(きょうじん)化計画』を実行したい」と訴える。
 これまで総裁選出馬について発信したことはなく、新規の参入だ。現在は無派閥だが、安倍晋三前首相に近い。
 一方、当選5回の平将明衆院議員は5日、ツイッターに「中堅・若手からも総裁選に候補者を出したい」と投稿。同世代の議員は「われわれから出せれば、国民に『自民党にもまともな人がいる』と映る」と期待を示す。
 ただ、立候補には党所属国会議員20人の推薦が必要で、クリアできるか不透明だ。
 総裁選をめぐっては、昨年の総裁選に敗れた岸田文雄前政調会長は態度を明らかにしていないが、下村博文政調会長や野田聖子幹事長代行、河野太郎規制改革担当相がかねて将来の出馬に意欲的。茂木敏充外相の名前も取り沙汰される。石破茂元幹事長は現段階で慎重姿勢だ。
 これに対し、二階氏は3日の記者会見で「総裁を代える意義は見つからない。現職再選の可能性が極めて強い状況だというのは誰もが承知の通りだ」と指摘した。出馬の動きを見越し、けん制した形だ。
 首相は7月、民放番組で総裁選出馬について「(現職として)時期が来れば当然のことだ」と表明した。だが、新型コロナウイルス対策に世論の不満が強く、内閣支持率は低迷。党員投票の結果次第で不人気ぶりが浮き彫りになる可能性がある。党内には「選挙の顔にならない」(閣僚経験者)との声は強く、国会議員票の行方も読み切れない。これが無投票を期待する主な理由だ。
 二階氏らは神経をとがらせており、別の幹部は「出たければ出ればいい。推薦人を集められるのか」と挑発した。二階氏は6日、視察先の静岡県熱海市で記者団に、高市氏について「総裁選に出るというあいさつも受けていないからお答えのしようがない」と述べるにとどめた。

時事通信
2021年08月07日08時15分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021080601233&;g=pol