「いよいよ終わりが近くなってきた」。永田町で一気にこんな声が広がり始めた。

「終わり」とみられているのは菅首相。6日、広島市で開かれた平和記念式典のあいさつで、事前に用意した原稿の一部を読み飛ばしたからだ。

 菅首相はこの日、「わが国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要だ」などのくだりを読み忘れ、直後の会見で「おわびを申し上げる」と陳謝したのだが、よりによって最も重要な「核兵器のない世界」を読み飛ばしてはダメだろう。

 NHKの中継を見ていても、菅首相の表情には覇気が感じられず、目はうつろ。そんな状況から、永田町でささやかれ始めたのが、2007年9月に体調不良で突然の退陣を発表した第1次安倍政権のケースだ。

安倍前首相は読み飛ばしを「(退陣の)決定的な要因のひとつだった」と告白

 当時、安倍前首相は臨時国会の所信表明演説で、原稿を3行読み飛ばす失態を演じ、直後に国会内で会った麻生幹事長(当時)に向かって「もう辞めたい」と話したと報じられていた。

 安倍前首相も2008年1月に月刊誌で、原稿3行分を読み飛ばしたことを振り返りつつ、「このままでは首相の職責を果たすことは不可能と認めざるを得なかった。決定的な要因のひとつだった」と告白していたが、この安倍前首相の状況を振り返れば、今の菅首相には「首相の職責を果たすことは不可能」というわけだ。

 案の定、菅首相の読み飛ばしにネット上では、<菅総理は全広島市民、県民、そして国民に対し土下座するような気持ちでお詫びするべきだろう。><広島でのこの失態はありえない。><早々に辞任が菅総理としての仕事は急務じゃないでしょうか?>などと、コメントが殺到。被爆者団体からも「不勉強だ」などと厳しい批判の声があがっている。

 “Xデー”はそう遠くないのかもしれない。

日刊ゲンダイ
21/08/06 18:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/293039