AERAdot.が既報(7月14日配信)した菅政権が都道府県へ通達していた休業要請に応じない飲食店への「第三の圧力」問題が15日、大きく動いた。

 菅政権は酒類販売事業者向けの支援金の給付要件として、酒類提供停止に応じない飲食店との取引をやめるように求めた文書を、6月11日付で都道府県に通達。東京都や大阪府などがこの通達を受け、事業者に誓約書の提出を求めたが、SNSなどで強い反発の声が上がっていた。

 菅政権はこうした批判を受けて、文書の撤回を都道府県に新たに通達したことが15日までにわかった。

 西村康稔経済再生担当相、菅義偉首相らは7月8日、金融機関と酒類販売業者に対して同じような「圧力」要請を行い、それぞれ撤回して陳謝したばかり。お粗末な対応に改めて批判が噴出しそうだ。官邸関係者がこう話す。

「菅首相の判断を仰ぎ、西村大臣が6月11日付で都道府県へ出していた通達の撤回を決めました。この文書はこれまで報じられず、東京都や大阪府など都道府県が独自で酒類販売事業者に誓約書を書かせ、酒類提供の停止に応じない飲食店との取引をやめさせようと圧力をかけたと勘違いされていました」

 14日の衆院内閣委員会でも国民民主党の山尾志桜里議員は東京都が酒類販売事業者に求めた誓約書を取り上げ、「政府は撤回したが、東京都には残っている」と西村大臣にトンチンカンな質問をしていた。

「西村大臣もとぼけて、都に責任転嫁して答弁を終わらせようとしていました。しかし、その後、政府が6月に都道府県へ出した通達文書が報じられ、またも炎上すると危惧。14日夜中からこっそりと都道府県へ撤回文書を送りました」(同前)

 AERAdot.が新たに入手した内閣府地方創生推進室と内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が15日までに各都道府県に送った文書には次のように記されていた。

<「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金における「協力要請推進枠」の取扱いの変更等について(酒類販売業者に対する支援の補足)」(令和3年6月11日付事務連絡)において、酒類販売事業者に対する支援金の取扱いの補足事項を示したところですが、同事務連絡は廃止いたします>

6月11日の事務連絡とは、すでに既報した内閣府地方創生推進室と内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が各都道府県宛に出した通達文書だ。

「酒類の提供停止を伴う休業要請等に応じない飲食店との取引について」と題した箇所には、こう書いてあった。

<飲食店が同要請等に応じずに営業を続けていることを知りながら取引を行っている酒類販売事業者について、支援金を支給することは適当ではありません>

<都道府県においては、月次支援金が給付要件を満たしているかどうかを確認する宣誓・同意書を申請者に求めていることを参考に、酒類販売事業者に対して、飲食店が要請に応じていないことを把握した場合には取引を行わないよう努める旨の書面の提出を求めるなどの取組みを行うようお願いします>

 西村大臣は休業要請などに応じない飲食店に対し、金融機関を使い“圧力”をかけると発言し、大炎上したが、この都道府県を通じた要請も全く同じ図式。約1か月前から”圧力”ははじまっていた。政府関係者はこう解説する。

「これも政権、内閣官房と内閣府による地方自治体を使った飲食店への”圧力”です。内閣府地方創生推進室は各都道府県への配る交付金を握っていますから、自治体は従わざるを得ない側面がある。この要請は事実上、『命令』です。こうした通達は菅首相をはじめ、関係閣僚はもちろん承知の上です」

 皮肉にも、今回こうした”圧力”があったことが明るみに出たきっかけは、“菅親衛隊”からのツイートだった。川松真一朗都議が14日朝に、東京都の酒類販売業者に対する支援給付金の誓約書に関して、こう糾弾するツイートを投稿していた。

<西村大臣発言ばかりがマスコミやSNS上で展開されているが、東京都の酒販業者が支援金給付を申請する際、「酒類の提供停止を伴う休業要請等に応じていないことを把握した場合には当該飲食店との取引を行いません。」を誓約させる事になっている。こうやって締め付けを行なっている都政>

続きはWebで

AERA
2021.7.15 05:02
https://dot.asahi.com/dot/2021071500001.html
https://cdn.images-dot.com/S2000/upload/2021071500001_2.jpg