NTTグループによる接待を巡る問題で、内閣官房IT総合戦略室の幹部が、新たに昨年10月から3カ月連続で接待を受けていた疑いがあることが、「週刊文春」が入手したNTTの内部資料で判明した。

 NTTグループから接待を受けていた疑いがあるのは、内閣官房IT総合戦略室の向井治紀室長代理。東京大学法学部卒業後、旧大蔵省に1981年に入省。太田充財務次官は2年後輩だ。

 内閣府関係者が語る。

「向井氏は理財局次長などを経て、2010年から内閣官房でマイナンバー制度の立ち上げなどに携わってきました。霞が関では『ミスター・マイナンバー』の異名を持つ人物です。現在は、今年9月に発足予定のデジタル庁の設置準備を担う内閣官房IT総合戦略室の室長代理と、内閣府番号制度担当室長を兼務している。マイナンバーはデジタル庁に一元化されることもあり、平井卓也デジタル相は向井氏を側近として重用しています」

 平井氏は昨年9月16日、菅政権の発足とともにデジタル相に就任した。NTTグループの内部資料によれば、その直後の昨年10月2日と昨年12月4日、同グループが運営する高級会員制レストラン「KNOX」で、向井氏は平井氏とともに、NTTの澤田純社長から接待を受けていた疑いがある。さらに、内部資料によれば、昨年11月9日にも「KNOX」で、向井氏はNTTデータの常務から接待を受けていた疑いがある。

 NTT関係者が言う。

「澤田氏がKNOXで接待する会食は、2万4千円のコースに1本10万円単位の高級ワインを加え、5万円を目安に調整されることが多い。一方、NTTデータの常務が接待した会食は、1人2万円が目安と見られます」

 そのNTTは、向井氏が幹部として所属する部局の事業を数多く受注してきた。

 内閣官房IT総合戦略室が開発を担う五輪アプリを、今年1月14日、NTTコミュニケーションズを中心とした5社のコンソーシアムが約73億円で受注。その後、事業費が削減され、NECとの契約は解除されたものの、NTTコミュニケーションズは引き続き約23億円分の受注を確保している。

マイナンバー関連事業も相次いで受注

 また、2014年には内閣府が発注したマイナンバーの中核システムを、NTTコミュニケーションズやNTTデータなど5社のコンソーシアムが約114億円で受注するなど、NTTグループはマイナンバー関連の事業を相次いで受注している。

 国家公務員倫理規程では利害関係者との1万円を超える会食は、届け出を義務付けている。内閣府にはNTTへの許認可権はないが、人事院に見解を求めたところ、以下のように回答した。

「契約の申込みをしようとしていると客観的に言えるなら、利害関係者になり得る。同席した政治家が支払った場合でも届け出は必要です」

 国際基督教大の西尾隆特任教授もこう指摘する。

「法の趣旨は公務への信頼を損なわないようにするものですから、許認可や契約に限らず、行政指導など幅広い範囲で接する業者が『利害関係者』と定められます。ITやマイナンバーを所管する向井氏が発注の直接の担当者ではなくても、NTTは『利害関係者』にあたるでしょう。届け出をしなければ、国家公務員倫理規程違反の疑いが残ります」

 NTTとNTTデータはともに以下のように回答した。

「個別の会食についてのお答えは差し控える」

 平井氏は6月25日の記者会見で「私と、同席した事務方の分は(費用を)きっちり払っている」とした一方、向井氏が届け出をしていたかどうかについて問われると、「これは事務方に聞いて下さい。私が届け出するわけではないので」と回答した。

 当の向井氏や内閣官房には6月20日以降、会食や届け出の有無などを繰り返し尋ねたが、6月29日夕方までに一度も回答はなかった。

 その後、朝日新聞デジタル(6月30日午前10時半配信)によれば、IT総合戦略室は昨年12月4日の会食について、向井氏は同席していたが、「利害関係者にあたらない」と向井氏は判断し、届け出を出していなかったと説明しているという。

 谷脇康彦前総務審議官はNTTから3年間で4回の接待を受けるなどし、停職3カ月の処分の末に辞職した。平井氏はデジタル庁発足に際し、公共事業の受発注などに関するコンプライアンス委員会を設置する意向を示しているが、向井氏の疑惑を巡っても徹底した調査を求める声が高まりそうだ。

 6月30日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び7月1日(木)発売の「週刊文春」では、NTTグループの内部資料に記された会食の詳細や、平井氏や向井氏との会食に同席した人物の証言なども合わせて報じている。

文春オンライン
6/30(水) 16:12
https://news.yahoo.co.jp/articles/1bfaa2ac9660a44f73fb04a731f711eab437e169