「当て逃げをしたというような認識はなかった」

 今月8日、秘書が運転する車の後部座席に乗車中、東京・港区六本木の交差点で当て逃げ事故を起こしていたことが報じられた自民党の武井俊輔衆院議員(46)=宮崎1区。車は車検切れで、無保険だったことも判明。警視庁が道交法違反容疑などで捜査中だ。事故から2日経った10日、武井議員は国会内で報道陣の取材に対し、「当て逃げをしたというような認識はなかった」などと釈明していたが、「いまだに議員からの謝罪はない」と憤りを見せるのが被害者の男性(57)だ。日刊ゲンダイ記者があらためて当時の状況を聞いた。

 この男性や捜査関係者などによると、事故が起きたのは8日午後6時半ごろ。港区六本木の交差点付近で、武井議員の60代の男性公設秘書が運転する車が左折した際、青信号で対面から横断歩道を渡ってきた男性の自転車の左側面と、車の右前がぶつかったという。

「車がそのまま走り去ろうとしたため、『当て逃げだ』と叫んで、200メートルほど追いかけると、次の赤信号で止まったので車の前方に回りました。そうしたら降りてきた秘書は『お前! なんで飛び出して来たんだ』と怒鳴ったのです。私はびっくりして、『ふざけるな。当て逃げだろう』と言い返しました」

■同乗していた武井議員は無関係を装うそぶりを

 男性が驚いたのはこの時の武井議員の態度だった。

「止めた車の前方部に回り込んだ際、国会の入館証が見えたので、運転手は秘書かなと思いましたが、(武井)議員本人が乗っているとは思いませんでした。その後、警察を呼んでやり取りしていると、後部座席のドアが開いて降りてきたので、『議員さんですか』と聞くと、(武井議員が)『まあ』と。『何か(言うことは)ないんですか』と言うと、左手の掌を上に向けながら(事故を起こした)秘書の方に誘導する仕草を見せ、無関係を装うそぶりを見せたので『えっ』と、びっくりしました」

男性は武井議員に「ドライブレコーダーを確認しましょう」と何度も迫ったものの、武井議員は「私は見方が分からない」と言うばかりだったという。結局、運転手の秘書が男性に謝罪したのは警察の現場調べで、車の右前ライトの下部分に10〜20センチほどの傷が確認されてからだった。

「警察官が(秘書に向かって)『この傷で(運転手が)気付かないわけがないでしょう。被害者にまず謝りなさい』と大声で言ってくれました。すると、秘書はいったん謝ったものの、すぐに携帯電話でどこかに電話を掛けようとしたため、その様子を見た警察官が『心から反省しているのか』と怒ってくれました。武井議員はこの時も離れた場所から黙って立って眺めているだけでしたね」

 さらに男性が不満を募らせているのが、その後の武井議員側の対応だ。

「事故の翌朝に秘書から電話があり、『申し訳なかった』というものの、相変わらず『(自転車に)気が付かなった』と。その翌日、『弁護士に電話してほしい』というので、電話すると、その(代理人)弁護士は『今後は(武井)議員と話をしないでくれ』『治療費の領収書をまとめて郵送か持ってきてほしい』と言うのです。(議員)本人からは一度も謝ってもらっていないのにですよ。この誠意のない態度は何なのだろうと思いました」

「武井議員は事故後の会見で、『お騒がせしてすみません』と言っていましたが、私に対しては何もありません。無視です。(政治家として)きちんと謝罪するべきではないでしょうか」

 武井議員の事務所に事故の経過や議員の発言などについて事実関係を問うと、事務所の男性が「議員と確認中なので待ってほしい」などと繰り返した後、ファクスで、<現在、秘書が事情を聴取されていることから、現時点での説明は差し控えさせて頂いています。現在、弁護士を通じて被害者の方に対し誠実に対応させていただいているところです。なお、貴誌の質問内容には(略)当方の発言やその趣旨と異なるものがあることを指摘しておきます。>と回答した。

日刊ゲンダイ
2021/06/19 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/290788