2019年参院選広島選挙区を巡る公選法違反(買収)事件で有罪となった河井案里元参院議員の陣営への1億5000万円提供問題を巡り、当時党総裁だった安倍晋三前首相は25日、記者団から自身の関与を問われ、何も答えなかった。1億5000万円の使途などに関する説明責任に関しても無言を貫いた。
 党から河井陣営への1億5000万円の支出について、自民党の二階俊博幹事長は24日の記者会見で、責任は自らと安倍氏にあるとの見方を示していた。
 党総裁当時に案里元議員の擁立を主導し、二階氏から資金提供の責任者として事実上名指しされた安倍氏は、25日の衆院本会議後、記者団に「支出に関与したのか」「1億5000万円の8割が税金で賄われている。説明責任はどう考えるか」と聞かれ、無言で国会を立ち去った。
 党が支出した1億5000万円は、8割を占める1億2000万円が税金を原資とする政党交付金。支出の一部が買収に使われた疑惑もあり、説明責任を求める声は党内からも上がっている。

◆林幹事長代理「根掘り葉掘り踏み込むな」

 二階氏ら党の現執行部は、案里元議員や夫で元衆院議員の克行被告が逮捕、起訴され、捜査当局に資料が押収されているとして、正確な使途を説明できないとしている。二階氏の会見では、記者団から相次ぐ質問に、同席した林幹雄幹事長代理が「根掘り葉掘り踏み込まないでほしい」と、いら立ちを見せる場面もあった。
 党内のベテラン幹事長経験者は「カネを出す権限は総裁にある」と安倍氏の関与を推察する。だが現執行部側は「個別の誰が(決めた)とかではなく、組織決定して交付している」(林氏)と、責任の所在があやふやなまま幕引きを図りたい考えだ。(山口哲人)

東京新聞
2021年5月25日 21時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106569