自民党が成立を目指す「LGBT理解増進法案」が差別の禁止を明記していないのは問題として、LGBTなど性的少数者の当事者や支援者が6日、東京都千代田区で法案に反対する記者会見を開いた。会見したメンバーによる「有志の会」が2日にウェブ上で発表した声明には、6日午前10時時点で4438人の賛同者が集まった。代表の松岡宗嗣(そうし)さんは「理解を求めるだけの法案では、実際に職場や学校で差別を受けている性的マイノリティーを守ることはできない。差別をなくすには『差別をしてはいけない』というルールを示すことが重要です」と話し、差別禁止を盛り込むよう求めた。【藤沢美由紀/デジタル報道センター】

 ◇「差別を放置、むしろ後退」の懸念

 LGBT理解増進法は「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」。自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」(稲田朋美委員長)が先月、法案の要綱を了承した。要綱によると、「国民の理解の増進に関する施策の推進について、国の役割等を明らかにする」「多様性に寛容な社会の実現に資する」ことなどを目的と設定する。具体的には、理解の増進に向けた基本計画策定を政府に義務付け、施策への協力を企業や学校の設置者に求めるほか、「知識の着実な普及」や「相談体制の整備」などの施策について定める。一方、野党は差別禁止を盛り込んだ「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法律案」(差別解消法案)をまとめ、既に国会に提出しているが継続審議となっている。現在、与野党間で協議が進められているが、自民党は理解増進法案の今国会への提出と成立を目指している。

 6日に記者会見したのは、ゲイであることを公表している一般社団法人fair(フェア)代表理事の松岡さん、トランスジェンダーの時枝穂(みのり)さんら、運動に取り組む当事者たちと、エッセイストの小島慶子さんら支援者の計9人。

 有志の会がまとめた資料によると、LGBTQの関連では、80以上の国が雇用において性的指向に関する差別を禁止しており、主要7カ国(G7)でそうした法律がないのは日本だけという。松岡さんは「『理解増進』というと聞こえはいいが、実際には差別が放置され、当事者がいじめや差別から守られず、むしろ性的マイノリティーに関する世の中の動きを『後退』させる危険すらあります」と強調。「この法律ができることで、例えば同性婚を実現しようとした場合に『理解が先、まだ理解がない』といつまでも実現させない言い訳として使われてしまうのではないでしょうか」などと懸念を示した。

 有志の会メンバーの鈴木賢・明治大法学部教授は「いじめられている当事者の子どもは今もたくさんいる。今回の法案では、学校がいじめられる側の子どもたちを守ってくれるとは期待できません。(理解増進のみの不十分な)法律がいったんできてしまうと、『もうLGBTの問題は終わった』とされてしまっては困るので、反対せざるを得ない」と訴えた。

5/6(木) 18:50配信 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/e09ad6d1b1c60233ea1cd0cbba910ed0fc4225d5