新型コロナウイルスの第4波が猛威を振るっている。強い感染力と重症化……。これまでの“常識”を覆す威力を見せつけている。さらに、ここへきて、子どもの重症化リスクが浮上。警戒が強まっている。

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 熊本市の10歳未満の男児は4月21日、微熱の症状があり、26日に抗原検査で陽性が判明し、入院した。市内の陽性者の濃厚接触者で、既往症はなかった。

 症状は非開示だが、27日からは集中治療室(ICU)または人工呼吸器を使った重症治療が続いた。市によるとその後、回復し、5月1日に退院したという。

 回復したのは何よりだが、既往症のない子どもの重症化は衝撃だ。しかも、熊本市は「変異株のスクリーニング検査では陰性でした」(感染症対策課)と日刊ゲンダイに回答。重症化リスクの高い変異株感染じゃなくても、子どもが重症に至っているのだ。

 また、江戸川区の10歳未満の児童は4月13日に発症し、28日に陽性が判明。咳、全身倦怠感、頭痛、嗅覚味覚障害、咽頭痛に加え、重篤な肺炎の症状が出ている。

「第4波はこれまでとは質的に違う」と専門家

 第4波は、子どもも重症化を警戒する必要があるのか。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。

「菅首相は先月23日の会見で『ワクチンという武器もある』と強調しましたが、それは大人の話。16歳未満はワクチン接種の対象外なので、重症化への対抗手段は感染させないことです。子どもから同居家族へ感染する懸念もあり、子どもの感染問題は極めて重要課題です。ところが、『子どもは感染しにくい』という固定観念にとらわれて、子どもはいまひとつクローズアップされていません。変異株に限らず、第4波はこれまでとは質的に違う印象です。警戒してし過ぎることはありません」

 西村経済再生相は2日、変異株の感染力の強さに触れ「屋外でマスクを着けていても感染が確認される事例の報告が相次いでいる」と警戒感を示した。外でマスクをしているのに感染が相次ぐとはこれまでになかったことだ。

 ウイルス量が多ければ、感染力を強め、発症、重症化しやすくなる。変異株陽性者のウイルス排出量は、従来型より100〜1000倍との研究がある。一方、3月31日に認定された鳥取市の飲食店クラスターは、変異株感染者はいなかったが、40人中、16人から変異株並みのウイルス量が検出されている。

 変異株に限らず、第4波は大人も子どもも経験したことのない脅威なのだ。なのに、菅首相は、子どもを「国の宝」と言うだけで、全く手を打とうとしない。熊本の10歳未満の重症事例から学ぶことはたくさんあるはずだ。

日刊ゲンダイ
2021/05/06 14:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/288776